6月8日13時30分ごろにフランス北部のリールでロマ人キャンプが原因不明の火事になり、4歳前後の少年が焼死体で発見された。現場はリール東部側の環状線沿いに1キロにわたるバラックやキャラバンが集まっている不法キャンプで5年前から住んでいる。30人ほどの消防救助員が駈け付けた。火炎と煙の厚い壁がさえぎり救援作業が困難な状態で、近くを走る高架環状線も長時間に渡り停止した。火事は5,6件の掘っ立て小屋を含む100平米を焼き尽くした。火事は引火などの事故的なもので人種差別的な犯行ではないと見られているが、目下リール市の都市安全局が調査を開始している。(パリ=飛田正夫 2015/06/10 1:19日本標準時)
現場近くにいたリール市長のマルチーヌ・オブレさんはすぐに駈け付けた。消防隊員とほぼ同時に着いたときには、子供たちは安全な場所に保護されていたという。一人の少年がいなかったので心配していたのだという。
この事件のせいかどうかはわからないが、9日昼の仏国営ラジオ・フランス・アンフォは、第二次世界大戦中のドイツ支配の時期にはマヌーシュとも呼ばれ、またロマ人やジタンと呼ばれた人々は通称「カルネ」という「通行証明書」を持たされていた。これが今は「リブレ」という「手帳」、つまり当時の「カルネ」に相当するものを持たされている。これは「みんなが仲良く暮らすフランス共和国の精神」に反するものであって、彼らジタンなどの人々を「辱める印」となっていると批判されている。それためにこの印を廃止する決議を議会で決めるのだと同ラジオでの報道がなされた。
ここのところ話題になっている大都市部での多くの移民の不法住居やその撤退などで、この「カルネ」が問題視されている。しかしそれでもって、移民や不法住居者が消えるわけではない。「差別の印」はもっと別なところにあると思われる。外見でわかる皮膚の色などもそうかもしれないが、この国籍を証明するパスポートの有無が今度は差別を露骨にするだろう。彼らにはこれがないからである。