2011年2月7日月曜日

【コラム】サルコジの「裁判所告発」は 若い女性の誘拐殺人事件の世間注視で 「再犯者メディア化」が狙い















 フランスで誘拐殺害された若い女性のレティシアさんの事件でナントの裁判所や警察が機能してないとしてその責任者を処罰すると告発したサルコジ大統領に対し判事や警察官、弁護士などが抗議して大きな問題になっている。人々が関心を寄せる話題でサルコジ氏がメディア化しようとして早急な行き過ぎた発言となったようだ。10日には大掛かりな抗議集会がナントでもたれる。これに連帯したフランス各地の裁判所でも法廷業務を停止する動きが多発している。7日現在では15の裁判所が抗議の停止をしている。「ラジオFrance Info」のラファエル・ドゥシェマンさんの質問に答えたカラチ仏人殺害事件の予審担当で有名なマルク・トルビデェック判事が答えて、刑務所の定員増員問題はサルコジ以前からあった。しかしこのことで裁判官を告発してみせたのがサルコジであるといっている。

フランスはヨーロッパでは住民1人当たりの裁判の手段が不足している国のひとつである。刑務所は人で溢れていて定員オバーであることは以前から知られていて、フランスの刑務所の環境は非人間的なために欧州人権裁判所(CEDH)からも注意を受けている。ブレスレットを装着させられて司法監察下に置かれている人も多くなっていて、当然そこにレティシアさんのような若い女性への性犯罪や誘拐殺人事件が起こることは予想されていたわけだ。裁判所も統合されて数が少なくなり処理能力には限界がでていた。

問題はこうした状況下で再犯者の起こす犯罪というのは十分に予想されていたものだ。これを指摘するのは容易であり、しかも世間が注視する若い女性への性犯罪や殺人を取り上げて(今回のレティシアさんの場合のように)メディアで自分を売り込もうとする野心はなにか道徳的な価値が転倒しているのではないかというのがサルコジ大統領の早急な告発に対する今回の裁判所や警察組合や弁護士らの怒りの表明の裏にある心理なのだと見ることができそうだ。



2月4日、フランス警察組合の中心的なSNOPと SGP-FOではレティシア事件で判事と警察に対して「機能してない。責任者を処罰する」などと早急な告発をしたニコラ・サルコジに対する不満が爆発した。

「リベラシオン紙fr.」によると、SNOPでは「部下に責任を負わせるのは許せない」「権力を持つ者の贖罪の山羊に(我々が)使われてはたまらない」といっているという。また「彼等がさらに優位に立つ結果になるような職務を引き受けることを拒絶する」といっている。同組合は「内務大臣なり裁判所による詳細な検査を待たずに早急に判断しナントの警察と判事を告発して処罰を要求したサルコジ大統領の責任を問うている。

さらに警察組合のSGP-FOでは記者会見で「この(サルコジ大統領)の告発は機械的なものだ」として「このやり方は、世間の注視を集め満足させる事件を探しだしメデア化させることを狙ったものなのだ」と告発の意図を指摘した。