(パリ共和国広場前。1月30日 写真は筆者撮影) |
(パリ=飛田正夫2016/01/31 7:57日本標準時)30日、パリをはじめフランスの主要都市で国家緊急事態の3カ月間延長と国籍剥奪法に反対するデモがあった。昨年11月13日のテロリストのパリ同時襲撃以来フランスは緊急事態態勢に入っているが政府はこれをさらに3カ月延長する構えで、7割ほどのフランス人はこれに賛成しているが、現在の法制や警察で十分にフランスの治安は管理できるのに必要以上な警察権力の強化・増大がフランス人の自由を損ね縮小することになり危険だとして、左派や人権団体や組合が中心になり市民千人以上が街頭にくりだした。国籍剥奪法案はテロリストなどの重罪の国家反逆罪に対してフランス国籍を失うもので二重国籍者だけが対象になるものだが、生誕地権などフランスでの人権が縮小されることで反対している。この政府の姿勢に反対し一昨日に辞任したのがトビラ法務大臣であった。フランスの市民はテロリストによる恐怖で安全が必要だとしながらも、このテロリストの恐怖だけでなく、テロリストを盾にして国家権力の増大が恒常的に許容されてゆくことで、市民の自由を閉ざしてくる危険性を強く訴えている。デモでは、「国家緊急事態は国家非常事態」「天気は悪い、政府も同じ」などと叫んで行進した。マルセーユやトゥルーズやポーやバイヨンヌなど70の都市でもデモがあったという。
パリでは午後2時半から共和国広場から抗議デモが開始され南西へ走るチュルビゴー通りを下り、エチエンヌ・マルセル通りの大きな通りを抜け、国立フランス銀行前のヴィクトワー広場から狭い通りのプチ・シャン通りを行進し、旧国会図書館前で左折しリシュリー通りをモリエールのコメディ・フランセーズまで出て、ルーブル美術館前の国家審議会で終わった。雨の中にも関わらず多くの参加者がありデモは大成功だとの声が多かった。
サンドニでのテロリストの隠れ家への仏国家警察特別部隊の奇襲作戦が無かったのであれば、彼等が準備していたとみられるパリ副都心デェファンスが狙われたということがわかっている。ベルギーではテロリストの隠れ家がわかっていながら夜間に逮捕する法律が無かった為に逃げられてしまったことから、フランスでの国家緊急事態の延長を支持する者は多い。しかしながらテロやテロリストを取り押さえてもテロを造成する原因が無くならない限り、つまり誤った人を殺害する戦争や殺人を許す思想を是正しない限り問題は解決しない。