(パリ=飛田正夫2016/05/17 11:28日本標準時)フランスの2カ月になる労働法改正反対デモはフランス全土の大都市で暴動化し警察とデモ隊の衝突が重なっている。特にレンヌ市内では商店のショーウンドーが壊され銀行の現金引き出し機が破壊された。知事はデモへの参加を禁止した。しかしデモ隊の動きは収まらない。パリ知事は昨年11月13日のパリ同時テロ襲撃事件で緊急非常事態令を発布した。それが今も継続状態だ。その緊急非常事態令を労働法改正反対デモに適応することで、デモの暴動化対策を法的に強化することを決めた。それによると5月17日へのデモ参加が禁止される数十人の反ファシスト活動家(AFA)、パリに50人ほどいるといわれる15歳から23歳の高校生・学生・労働者・装飾家などを含むグループの独立インター闘争運動(MILI)、激しい青年の集団で声明も不確かなアナーキスト集団の高校生総連合組合など、また、Social Protest Klub (PSK)という社会抗議クラブなどは、デモ禁止の対象になった。また危険な行動をするとされるカメラマンOEIL (Our Eye is Life) メンバーの1人がデモ参加を禁止されている。このフリーのカメラマンは、何も危害を加えるようなことはしていないと話している。これには数人の弁護士から強い反対がありこの方策を取り消し自由なデモができるように抗議があった。行政裁判所は17日朝方までに最終的判断を決める模様だ。
パリ市以外の都市でデモ禁止が適応されるのは、労働法案改正に反対し警察とデモ隊がぶつかり合っている、特にリヨンとナントである。デモの禁止は緊急非常事態令の中でも禁止されるものではないとオランド仏大統領はそのデモの権利を尊厳すると話していたが、この禁止令がだされるのはデモを舞台に暴力を目的にした過激グループを取り締まるためだ。
労働法案は左派側からの国家法案決議案反対が先週末に数票足らずで却下され、直ぐに右派による国家法案決議案反対投票があったがこれも可決できなかった。したがって労働法改正案は衆議院から上院へ移り再審議されることになった。エルコモリー労働相による労働法改正案は企業家側の雇用促進をもたらすが、これまでの労働者を保護する条件が悪化されて容易に解雇できるとされている。このことで企業家の危険負担が軽減されれ雇用促進ができるといわれているが労働組合は反対してデモを続けている。フランスの中小企業の2%の労働者が組合に加盟しているが、ほとんどの労働者には労働組合は存在しない。労働者の中に賃金交渉のできる人とそれが出来ない大多数のフランス人のいることは余り知られてないし話題にも上らない。フランスのデモは一部の利益者達の対立であり騒ぎであるようにも思えるのはそのためで、多くの移民や地下産業などの非合法の中で働く労働者が沢山いるのである。彼等はこういうデモの現場には姿をあまり現さない。
【参考記事】
http://www.lemonde.fr/education/article/2016/04/08/mobilisation-contre-la-loi-travail-le-mili-une-bande-de-potes-qui-assume-sa-violence_4898628_1473685.html
http://www.lemonde.fr/police-justice/article/2016/05/16/des-militants-interdits-de-manifester-que-dit-la-loi_4920476_1653578.html