2013年12月13日金曜日

サルコジの「買春婦客引き禁止法」は廃止 犠牲者の「売春婦保護法案」が仏下院で可決

12月4日、フランスの下院でこのほど買春婦は性的暴力の被害者で、買春業者や客に罰金を課する法案が賛成268、反対138、棄権79で決まった。同法案は買春婦が買春業やマフィアの犠牲者になっているとするもので社会復帰を希望する者には国が月額336ユーロ(約4万4千円)の補助金と労働権のある6ヶ月間の仮滞在許可証を発行することが決まった。

同時にこの法案では、2003年サルコジ前大統領が内相時代につくった売春婦が多額の罰金を払う「買春婦の客引き禁止法」(サルコジ法LOI SARKOJI Ⅱ)は廃止されることになる。それに代わり売春婦を罰するのではなく、今後は犠牲者として取り扱い彼女たちの社会復帰を目指す。このような売春婦対策はスウェーデンを手本にしたものだがフランスは世界で第5番目の国となる。

この「サルコジ法」が実施されてから10年になるが、その間多くの売春婦が都市部での警察の取り締まりの目を恐れ、近郊の目立たない環状線付近や森の中に移っていった。そのために買春婦たちの健康安全を援助するアソシアションなどの手の届きにくい危険な場所が彼女たちの仕事場となっていた。12月4日夜のフランス国営放送テレビA2でもトップで伝えている。

仏政府は売春婦(90%ほどは外国人から抜け出そうと希望する者を救済する補助金として2000万ユーロ(約26億円)を提供する。逆に買春婦を買った客は1500ユーロ(約20万円)の罰金が課せられる。また再犯の客には3570ユーロ(約46万円)の罰金と2ヵ月の禁固刑が決議された。

この法案の成立を不服とする男性たちが反対している。下院で討議の開始された11月29日には、金曜日ということもあり地方選挙が近いためか議員たちは各自の選挙区に帰っていたようで出席は20人ほどと少なかったが決議投票の4日には大多数が参加している。

サルコジ側の国民運動連合(UMP)は反対が101人、賛成は11人しかいなかった。UMPでは「新たな不法移民を呼び寄せる」ことになるとして同法案に反対している。

エコロジストは反対が12人、賛成4人。エコロジストでは「客に罰金をかけることが逆に売春婦を隠すことになるのが弱点だ」とする者もある。

同法案が可決したことを喜ぶ女性人権大臣のナジャ・バロー・ベルカセンさん(兼政府スポークスマン)は、これは客を処罰するもので街頭買春を10年で半減させるのが目標だと話している。

ベルカセンさんはサルコジ法により売春婦が危険な場所で働くことになった。これを市民の目のある都心部で仕事ができるようにしたのです。少しぐらい媚びを売ったからと言っていいではないですかとも言っている。だからと言って私は売春を奨励しているのではないのですと釘を刺すことも忘れてない。彼女たちは危険な所で仕事をすることになって一番人権が尊厳されてなかったからですとサルコジ法の帰結を批判した。

何故このような論議が今フランスで起こっているのかといえば、それは新政権社会党のオランド大統領は人権の党であることを国民に訴えたいからなのだ。ラマヤダ前人権相は、「人権は金がかかる」と発言したサルコジ氏に辞任させられたが、オランド氏は男女同数の大臣を揃えしかも女性人権大臣をつくったのである。同法案は今後論議を重ねるが、6月末の上院で承認され施行される可能性が強い。