2015年3月3日火曜日

笹本俊二著「ローヌ河歴史紀行」(岩波新書 1980)を読む・・・・・美を求めて一つの風景論

笹本俊二著「ローヌ河歴史紀行」
(岩波新書 1980)
笹本俊二著「ローヌ河歴史紀行」(岩波新書 1980) 本はローヌの源流から地中海に流れ出るまでを流れに沿って書かれている。客観的な歴史やそこで活躍した有名人を縦軸に、著者の土地土地の風景への思いを横軸にして主観的な紀行文として書かれたものである。そういう意味ではある意味での観光案内書だともいえる。その中で笹本氏の風景論が少し出ている箇所がある。これはもう少し発展させてもよかったと思えるのだが、以下に引用しておきたい。

「鉱泉の水で有名なエヴィアンやトノンなどきれいな町もあるにはあるが、北岸のようにたっぷり歌枕に恵まれることがないのは、訪ねた文人墨客がすくなかったからだろうし、史跡に乏しいのは歴史との出会いが欠けていたせいであろう」(同書77頁)、「河の流れるところ風景は美しくなる。人間の住むところ風景は歴史となる」(同書206頁) ・・・・・美しい風景とはまさにこういう意味なのだと思う。私も同感である。