2015年7月28日火曜日

観光地モンサンミッシェルも一役 どこまでも平等性を追求する フランス農家の中間搾取「直接行動」抗議

ノルマンディーの観光地モンサンミッシェル島の光と影(撮影は筆者)

先週のフランスでの酪農農家を中心にした中間搾取企業として大手スーパーが狙い撃ちされた。一方でフランス国外から国境を越えてトラック搬入してくる乳製品や牛肉・豚肉がブロックされ商品が路上に破棄されたりマイカーに無料配布されたりした。フランスの農民は牛乳や肉が安く買い叩かれていることで中間搾取されているとして大手スーパーに豚を放って直接行動に出て抗議した。しかも今回の農家の抗議デモの作戦では、畑の中でトラクターや農業機械を展示しても牛や羊が見ているだけで誰も関心を引けないとして、世界的に有名なモンサンミッシェルへの街道封鎖で世間の注目を集めることに成功したことだ。これは偶然のようだったが、中間搾取という問題に関しては、繁栄する観光地モンサンミッシェルの只中にありながらこの牧歌的な景観形成に貢献している筈の酪農家への利潤は正当に還元されてこなかった。牛乳は一リットル50サンチーム(約70円)で農家から買われ、大手スーパーはこれを1ユーロ(約140円)前後で売るわけだ。ノルマンディーの現地の牛乳や肉やチーズのことでもあり、生産者農家が正当に利益を得てこなかったのであって、これが栄える世界遺産観光産業との関係で経済に光と影を作ってしまっているという新たな疑問点が政治の場に提出される契機となったと評価できるだろう。(パリ=飛田正夫 2015/07/28 17:53日本標準時

フランスの農民が自分たちの産品が安く買い叩かれる理由は、スペインやドイツなどからずっと安い牛乳や肉や野菜などが入ってくるからで、これらの製品を買っている大手スーパーがフランス国内産品と比べ、天秤(バランス)に架けて、仏生産者の卸値を下げさせているという認識です。しかもそのフランスの牛肉や乳製品にあれこれと「赤ラベル」とか「AOC/AOP」などといったレッテルを付けて消費やの目を欺いて儲けている。そこで凄いと感じたのは、こういう認識の上で、フランスの農民が家畜やトラクターなどを動員して外国からの農作物を運んでくるトラックをストップさせて外国品物を奪取・破棄する実力行使にしばしば出るということです。

こういうことは私たちには非常に理解しがたいことなのですが、フランスの政府も一般市民も当然だという共通の理解がこれにはあるのがまた驚きなのだ。

オランド仏大統領も大手スーパーに生産酪農農家へ買値を上げるように発言している。スーパーに来た客も事情を知ってますから、ケースに山積みされた肉やヨーグルトや流れ出した牛乳などを見ても、むしろ当然だという顔で驚かないのです。

現在のフランス政府の無能さを批判しようと、今回もサルコジ前仏大統領が事態に「火に油を注ぐ」批判の発言をしたが、これはサルコジがむしろ農家を改善しドイツのように近代化して競争力を養ってこなかった自分の失態を批判していることになるのです。それをサルコジは知らないふりをして、責任逃れをしている。みんな忘れていると思っているのか、市民を見くびった批判であり、ずるいわけです。

農民がぐずぐずしてないで直ぐに実力行使をやってしまうというのは、自分たちの権利感覚に忠実であり非常に鋭いからだと思えます。ようするに一言で言えば、不正を黙っていないということです。私はこれを見ていて、フランスの民主主義は自由な企業のごまかしの詐欺的利益搾取を容認するのではなくて、市民の正当な利益を求める平等性の価値観がより尊重されている社会なのではないかということだ。

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モンサンミッシェルが独り栄えて、地場産業が消えようとしているという関係