2011年5月18日水曜日

メディア「殺害」「晒し首」の「仕掛け人」を告訴 ストロスカーン支え 仏元社会党法務大臣らが反撃

5月17日午前中にミッテラン大統領時代に法務大臣を務めたロベール・バダンテール社会党議員は手錠をされて引き回されているドミニク・ストロスカーン氏の写真報道は「メディアによる殺害」でそれを組織した演出者がいるとして批判している。ジャック・ラング元社会党大臣は、「メディアによる晒し首台(ピロリー)にストロスカーン氏を乗せた」と訴えた。マルチンヌ・オブリ仏社会党書記長は原告の女性を尊重しながらも「現在のところ我々が知っているのは検事が取り調べ中である」という点を強調。判決前の容疑者は手錠された写真をいかなるメディアも報道してはならないという「ギグー法」に違反することを示唆した。フランスメディアの執拗な行き過ぎた攻撃の裏に仕掛け人がいると見て反撃している。

バダンテール元法務大臣はラジオ「フランス・アンテール France Intere」で「尊厳が無いことに驚いた」 「これは意識的なメディアによる殺害だ」と話した。「バダンテール氏はメディアによるストロスカーン氏の写真掲載それ自体に関しては特に批判しなかった」が、「それを演出し組織した者を告訴して、判決前の打ちのめされた人に対し、たとえそれが何であれ無実の推定を尊厳すべきではないのか?」といっている。同氏はされに続けて「私がそこに見たのはシステムの故障だ。それは故意にやった破壊であって、それが過失なのである。アメリカの裁判とは無関係なのである」と重大な指摘をしている。 「どうして保釈金で釈放できなかったのか?それは彼が国際通貨基金(IMF)専務理事であったからなのか?」と問いを投げかけた。 

2000年6月15日に判決前の容疑者は手錠された写真をメディアは流してはならないとする法律「ギグー法」を成立させたエリザベット・ギグー元法務大臣(PS社会党)は、17日朝にラジオ「ヨーロッパ1」に出演した。そこではストロスカーン氏の弁護側に少しの反論の余地しか残してないアメリカの裁判に対して、「情報の均衡には十分に注意するように」フランスのメデアに呼びかけた。

ギグーさんはストロスカーン氏が「手錠を後ろ手にされて報道された写真には吐き気がする」といっている。「まったく心が動転させられた」とそのメディアの報道姿勢を批判している。「我々は真実が知りたい。今までの所では我々の知っているのは検事と総ての公開された情報の一つの意味は、国際通貨基金(IMF)専務理事の有罪性に集中して雪崩れ込んで動いているいる点だ」とギグーさんは強調している。そしてフランスの裁判に関しては「幸いにも米国のようには機能しない。フランスには予審判事がいて原告の告発と被告の弁護とを予審する」といっている。 

現在、ストロスカーン氏はニューヨークのリケール島刑務所の独房に収容されている。5月20日には検事によって23人のニューヨーク市民の代表に質疑がされて、今後に裁判に付すのかそれとも無罪放免にするのかを決める。そのあとで裁判に決まれば早急になされその期間は60日内に判決が下るといわれている。その間に財政が許せばだが、私立探偵などを雇って証拠を集めて弁護ができる。またこれまで秘密にされてきた検事調書も弁護側に公開されることになっている。一方、原告側には告訴の証拠を明かす義務がある。

フランス国営放送・テレビA2の17日よるのニュースではこのことを解説して20日に裁判になった場合に初めて両者が平等になると説明した。つまりそれまでは米国の裁判システムでは原告側が有利であるということだ。

社会党(PS)の大統領選挙の候補者選出は5月から6月に終了するので、いずれにしてもストロスカーン氏にとっては2012年の大統領への道は閉ざされたと見られている。唯一の可能性は5月14日に無罪放免の釈放が決まった場合だがほとんど可能性はないようだ。それは通常米国では検事の意見が市民裁判の代表23人に大きく影響するからだといわれている。

バダンテール仏元法務大臣やラング元社会党大臣、そしてギグー元法務大臣などが指摘しているのはアメリカの法律システムやメディアのやり方をまねてそれに便乗してフランスのメデアが行き過ぎた人権無視の執拗な報道をしてみせるのを警告したわけだ。それはフランスの持つ世界に誇れる人権の価値を守るためにも重要なことである。また人権無視のメディアが氾濫している裏にはそれを演出し組織した者がいると指摘したロベール・バダンテール元法務大臣の発言は新鮮であった。

少し一般のメディアの対応とは異なっているのはインターネット新聞メディアパー(Mdiapart)のエドウィー・プレネル会長の見解である。17日夜のフランス国営放送・テレビA2のニュースでレポートされて報道されていた。そこではプレネル氏は、これまでストロスカーンをメディアパーが扱ってきた時でも婦女暴行事件の騒ぎになるようなものはなかったと話した。たしかにストロスカーン氏は女性を魅了したがる人で女性好きのようだが、婦女暴行と恋愛問題は別である。恋愛では記事にならないと、笑いながらいつものように目を細くして答えている。

セゴレーヌ・ロワイヤル前大統領候補はマルチンヌ・オブリ仏社会党書記長との協定でストロスカーン氏が大統領選挙に立候補すればその時には自分たちは立候補を辞退するといっていた。ジャーナリストのアルバ・ベンチュラ氏によるとストロスカーン氏とロワイヤルとが会合するらしい。

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(参考記事)
Affaire DSK: la procédure de sélection du grand jury est lancée - Libération: "Robert Badinter, q"