2013年11月11日月曜日

街の定期市が、フランス庶民のミクロ経済として大繁盛

パリの蚤の市というとクリニャンクールとかの環状線沿いの定期市になるが、オペラ・バスチィーユ劇場前広場やセーヌ川沿いとか街のあらゆる所に市がでる。それには骨董品や本、写真、野菜や果物、魚、家禽、日用雑貨品、美術品など数え切れない。その殆どが商店やスーパーとは異なって外国人労働者が少人数でテントを張って店をだしている形式だ。1人から多くても3人ぐらいで経営しているのがほとんどだ。街の市場は週に2回ぐらい定期的に開かれる。それに商品を出すには、管轄の商工会議所へ登録し許可を受ければよい。あとはプラッサーと呼ばれる所場代を集める係員に毎回低額のお金を渡せばよい。私が質問したところでは、1㎡弱のスタンドでチップを入れて約7ユーロ(約840円)であった。その隣でさらに広い場所を借りて店をだしている男性は3ユーロ(約360円)しか払ってないといった。
(本文の初出 /公開日時: 2010年7月18日 @ 23:51  )

パリの定期市場(写真撮影/筆者 2010/07/17 )定期市場(しじょう)は低額で運営できる庶民のミクロ経済だ。上の写真は所場代金の領収書。下段左側の数字が料金で、右側の数字は税金(19.6%)だ。
定期市場での家族連れ風景 (写真撮影/筆者2010/07/17)
先ずは値段が安いので商品がどこから来たのかは問わない。この定期市場がなければ庶民の家計はやっていけないほどに大繁栄している。
財政危機の政治と、失業率9.9%以上、止まらない物価の上昇など庶民の財布の紐は固い、夏のバンカンスシーズンだが庶民はそんな余裕もない人が多い。公営ガスも今年に入り2度の値上げで17%も上がった。定期市場は、一般商店街のソルドと平行して並んでいるので、競合する商品があれば客足はどうしてもテント市場へとむく。けっこう繁盛している店が多いのは、場合によっては返品もできるし値段も交渉できるということがあるようだ。

定期市場ではメカー商品も特価で買える (写真撮影/筆者2010/07/17)
テントの中で店番をしていたのは若いアラブ系の頬ヒゲを長くのばした青年だ。家で準備したのだろうか椅子に座って弁当の包みを広げていた。脱税と献金疑惑で世間を騒がせている話題のフランス大手の化粧品会社 ロレアル社長でフランス一番の大富豪のリリアンヌ・ベッタンクールさんの会社の商品もあった。青年に質問するとストックなので安いのだという。一律どれでも、2.5ユーロ(約300円)だと食べながら座ったままだが、愛想よく答えた。

定期市場の風景 (写真撮影/筆者2010/07/17)
フランスには多くの旧植民地のアフリカ系移民が住んでいる。彼等は故郷の土産物を商品にして出している。せつめいを受けたがマリやギニア、コートジボワールなどの仮面がここにはある。葬儀、婚姻などの祝祭でつけたりする仮面だという。値段の表示は出てないので心配して聞くと、仮面の後ろにちゃんと小片に書き付けてあった。私が気に入ったのは85ユーロ(約1万円)だった。こんなにたくさんあるとどれも欲しくなるので、一度諦めることにした。わたしが買わないことを知るとギニア出身だという店主は50ユーロ(約6000円)ならどうかと値段を下げてきた。もっと下がりそうであったが、それはやめにして、親切な人なのでアフリカのことなどをお聞きして市場を後にした。
わたしはスーパーの表示値段でしか物を買ったことがない。値切ったりする交渉はなにか金銭にたいする汚さを感じていたのだろう。しかし経済の需要と供給の神の手はこうした売り手と買い手の値踏み交渉が無いところでは完全に効果を発揮できないのではないか。
たしかにこういった定期市場は経済のミクロの世界のことでしかないのかもしれない。野菜でも果物でも牛乳でもそうだが卸値がスーパーでの小売価格に比べて、あまりにも安く買い叩かれていると嘆く報生産者の声がしばしば報道されている。消費者は一人一人がこの小売価格に対し、つまり商店の付け値をそのまま受け入れるのではなく、値段を交渉するという消費行動があってもよいのではないか。