2013年11月11日月曜日

青年は罠にかかり射殺、「旅の人々」の証言と仏警察側と見解不一致

「旅の人々」は真実を求めている。彼らは仲間が警察に兎を射殺されるように撃ち殺されたことに不満なのだ。18日、怒って抗議した旅の人々はフランスのロワール川の中流のブロワ城に近いサンテニャン市の交番やパン屋などを襲って樹木を切り倒し3台の車を焼き払った。警察側の見解では、16日の夜から17日にかけて警察の車は、逃走する「旅の人々」の二人の青年を追っていた。検問で別の2人の警官の停止命令で青年たちの車は一度停止した。車が再度動き出し警察をボンネットの上に弾き飛ばしたので、警察が発砲し旅の人々の一人ルイジィ・ドゥケネ(22歳)の後頭部に弾丸が命中し即死したというものだ。(本文の初出 / 公開日時: 2010年7月23日 @ 23:17 )

旅の人々が同市を襲撃したのはその復讐なのだと考えられていた。ところが、ルイジィ・ドゥケネ氏のいとこの証言によると、「罠にかかったのであり、これはイノシシ狩りとよばれるもので、撃たれる前に狩り出されたのだ」といっている。また、「警察の検問はなかった。警察にいきなり射撃された」といっていて、警察側の証言と大分不一致が多く食い違っている。車を運転していた 同氏は、「もし車を止めたかったのなら運転手を撃つべきで、助手席の者を撃つようなことはしないだろう。そうではないか?」と、リベラション紙に発言している。

「旅の人々」といわれている人たちは、この事件では一部のラジオ・ニュースでは当初は「旅の人々」と呼んでいたが、途中で「ジタン」と呼び、直ぐに「旅の人々」と呼びなおした。95%はフランス人であるという。「旅の人々」という呼称は一般的には差別用語でジタン、ツィガン、ロマンなどと呼ばれる東ヨーロッパ系のノマードを含むものだ。多くは定職を持たたない職人などでフランスだけでなくヨーロッパ中を旅していて、町の周辺部にキャラバンを停車し集まって暮らしている。今回、水道やトイレの施設がある高速の休息所などの不法占拠をした場合、テントなどをすべて撤廃するとサルコジ大統領は宣言した。

サルコジ大統領が今月28日に大統領官邸エリゼ宮殿で予定したとするこの種の住民の諸問題を協議する宣言に対し、人権団体連盟(LDH)ではこれは「旅の人々」やジタンに烙印(スティグマ)を押すことで、フランス社会の諸問題を贖罪の山羊(スケープゴート)として、彼等の一身に背負わせようとすることだと述べ注意を喚起している。

烙印(スティグマ)化とかスケープゴートというのはこの場合は、もともとの論じられえるべき問題から目をそらせるためのメデア上での戦略のことをさしている。ある問題を過小視させるために興味をひきそうな事件を巨大視させて報道する体制メディアによる手法である。現在のフランス政府の最大の関心もここにあると見る。

ロレアル社長、大富豪のリリアン・ベッタンクールさんからサルコジ大統領への2007年の仏大統領選挙戦への違法贈与疑惑は高まっている。しかし民族的な差別問題などフランス人が深い関心のある事件を拡大視して大統領が取り扱うことに疑問をもっているわけだ。

現在のフランスでの最重要問題を隠すことにもなる。ベッタンクール疑惑はサルコジ大統領へも及ぶからである。これまで外堀で守ってきたのが諸大臣であったが、その一角は崩れ落ちて最近2人の大臣が辞職した。現在は内堀のエリック・ブルト労働相がベッタンクールさんから黒い金を受け取っていたかが問題になっている。ベッタンクールさん自身の会社ロレアルの脱税問題もあるがこれも問題の序列からすると主題ではない変奏の部類である。

LDHは、サルコジ氏が「旅の人々」の民族性をこのように利用しようとする協議は、彼等を犯罪人扱いしているようで、共和国の法律に照らしてすべきではないと訴えた。

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