2015年9月25日金曜日

仏国営テレビA2の役割 バルツVSフィヨン出演のデバで 世論調査や解説者の影響研究

マニュエル・バルツ仏首相をテーマに扱った仏国営テレビA2の2015年9月24日の夜のニュース番組後に実況中継されたスタジオには、バルツ内閣のメンバー17人も参加した。仏国営テレビA2の解説委員ナタリー・サンクレールの罠を跳ね返し、カリムとジャン・ダニエルの世論調査を盾に利用した解説に対し、バルツはその演劇的な効果を知っていて、ここはコミックの舞台ではないと批判の指摘をした。(パリ=飛田正夫 )


これは2012年の仏大統領選挙で、セゴレーヌ・ロワイヤルとニコラ・サルコジとの選挙デバが、第一回投票と第二回目の決戦投票の間に行われた事件を彷彿させるテレビ設営の演劇的効果を彷彿させるテレビ舞台であった。勿論2012年の時には舞台には司会者のプジャダスとサルコジとロワイヤルとの3人しかいなかったのだが、問題は最終投票を前にしたデバで、その論議終了直後にA2のジャーナリストが解説を入れたことであった。ノルマンディーで建設中の欧州加水型原発基地フラマンヴィルは「第三世代」のものであってサルコジが言ったのが正しいとテレビ視聴者に語ったのである。この人はかなり知られた人であったが、あれからテレビで姿を見てない。

今回のテレビではバルツを使ってフィヨン元首相を出演させ対決させた。一応の番組が終了したその後で、(くりかえすが)今度はカリムとジャン・ダニエルという二人が出てきて、実況中のテレビ視聴者への世論調査統計を援用しながら、バルツの評価を試みようとした。怪しげな魂胆を感じたバルツはこれを制した。ツイターの意見は尊重するがここで、コミックを演じる場ではないと批判している。カリムは自分がやっていることの喜劇性を認識したようでへこんだが、司会者のプジャダスが横から援軍を出していた。この辺にトリックがあるのかもしれない。

さて、難民の問題ではバルツは一言さっとだが、非常にいいことを言った。難民の受け入れは、欧州共同体で16万人。フランスはその内の3万になる。シリアやリビヤやアフリカの難民を全員受け入れは不可能だ。だから、その難民の原因を我々はアタックするのであるといった。そしてフィヨンに対し、難民を出し続けているシリアの独裁者アサドを空爆することを暗に説明したのである。

バルツは、サルコジが2008年7月14日のフランス革命記念際にこの親子二代にわたる独裁者アサドをフランス軍隊の行進するコンコルド広場の来賓席壇上に座らせた事実を指摘し、サルコジはエリゼ大統領官邸で会食を持ったと発言した。このことは、サルコジの首相を5年間やったフィヨンを前にして語られたのである。フィヨンはこれには一言もなく沈黙し答えられなかった。大きなパンチが臓腑に食い込んでいるのが隠せなかった。

本当は私は、次のことをバルツに言ってほしかったのだ。リビアからの難民が地中海で多くの死者をだした原因だ。サルコジが2007年秋にカダフィをパリの赤い絨毯の上に招待しエリゼ宮殿前の庭にテントを張らせて戯れた後に、「アラブの春」の到来が始まった。サルコジは独裁者との付き合いがまずく成ってきたわけだ。これを隠すためにサルコが急旋回してリビアのカダフィを空爆をしたということだ。リビアの空爆だけして後の復興援助もしなかったためにリビアは破壊の後で立ち上がれなくなり政体が崩壊してしまった。これをバルツは話すべきであったが、この話しは次の機会のために取って置いたのかもしれない。

非常に面白かったが、一言、個人的な見解をいうと、今回のこの2015年9月24日放映の仏国営テレビA2の番組というのは、2007年の仏大統領選挙戦でサルコジとワロイヤルとの最終デバとなったサルガボ会場でのテレビ対決を彷彿させるものだ。その時も、人影のないがらんとした会場に風が空間を流れ、誰一人いない室内にはA2だけ1局のカメラしか回っていなかった。ある筋書きを実現するためのテレビ局側の、デバ演説者の性格やテレビ効果や解説者のデバの視聴者への反響などといった研究材料として、今回のバルツとフィヨンの出演があったのではないかと危惧する。

 【参考記事】
http://www.francetvinfo.fr/politique/videos-des-paroles-et-des-actes-avec-manuel-valls-les-cinq-sequences-a-retenir_1098485.html

VIDEOS. "Des paroles et des actes" avec Manuel Valls : les cinq séquences à retenir