2012年8月8日水曜日

サルコジのオランド批判 リビア空爆の「行動」をシリアで要請か?

仏のサルコジ前大統領は8月7日に40分の長時間にわたりシリア国家審議会議長アブデル・バゼッド・サイダ氏と電話でシリア情勢に関して話した。両者の一致した見解はシリア危機を抑止するための国際社会の早急な介入行動の必要性にあるという。また、リビアで反体制派の国民評議会(NTC)を支援しカダフィ大佐を爆撃する先鋒に立ったサルコジ氏の行動がシリアでも同様に正当性があるという両者の収斂した見解であったとフランス通信(AFP)を引いて左派系新聞リベラション.fr.が報道した。このことで、もう一度サルコジ前大統領とベルナール・アンリー・レヴィー(BHL)とによるリビア空爆作戦の是非、フランスのリビア情勢対応のあり方が問題視されるだろう。

サルコジ氏はカダフィ大佐とは親密な関係にあり、2007年に締結されたリビアへの原発プラントや仏戦闘機ラファールの武器の販売でも有名だし、シリアの親子二代にわたる独裁者アサド大統領を仏革命祭(パリ祭)のシャンゼリゼ大通の仏軍対パレードにも招待していて、アサド政権を支援してきてもいる。何故、今になって手のひらを返すようなシリアへの「行動」要請の発言をするのかが疑問視される。

先週サルコジ前大統領は、オランド仏大統領を批判してリビアへの行動が弱いと発言していた。これに対しロラン・ファビウス仏外相(Laurent Fabius)はサルコジのシリアへの行動で記憶にあるのといえば、2008年のパリ祭(フランス革命記念日)にシリアの独裁者アサド大統領をアフリカ諸国の大統領と共にシャンゼリゼに招待して仏の軍隊行進を閲兵させ、その前夜にはエリゼ大統領官邸でアサドと食事をしたことぐらいだと反批判している。

「アラブ諸国の春」に逆行した仏政府の大臣らの行動で出遅れたフランスは、イメージ挽回を狙ってカダフィ大佐への空爆という行動があった。同様にシリアへのサルコジ氏の「行動」要請の呼びかけでも、これまでの自己の行動の誤りをつくろう自己保身の意味があると考えられる。

アサド政権への行動をオランド仏大統領に呼びかける裏には、サルコジ前大統領がオランドを自分と同じ空爆を行う同伴者にしたてあげようとしているのだとの解釈もできそうだ。しかしオランドはこのサルコジの提言にはやすやすとは乗らないだろう。

このサルコジ政権下のアサド来仏の機会には、フランスの先端電子機器会社(ノルマンディのレンヌにあるビュルBULL系列のアメジェスAmesys社)がリビアの独裁者カダフィへ2007年の仏国賓招待の時に売り込んだ情報統制機器と同様に、シリア市民の情報を統制する仏コスモス社(Qosmos)電子機器販売の取り引きがなされていたことが人権普及国際連盟 (FIDH)と人権擁護団体(LDH)によって2012年7月末に糾弾されている。

問題はサルコジ前大統領が何故シリアへの行動を性急に呼びかけるのかだ。そしてその行動とはシリアへの何を意味しているかである。

シリア情勢はリビアとは異なっていて、中国とロシアは国連安保理の拒否権を当初から行使し続けている。フランスが米国や国際社会の承認を取り付ける前からリビア攻撃を計画していたサルコジ前大統領の思惑と行動は、同じくシリア危機でも十分に認識される必要があるだろう。

【参考記事】
http://franettese.blogspot.fr/2012/07/blog-post_25.html?utm_source=BP_recent

仏人権団体が 仏電信機器搬入で シリア市民監視を告訴