2015年5月27日水曜日

パリジアン紙買収で 国立社会研究所(CNRS)のドミニック・ウォルトン氏がジャーナリストの独立を語る


フランスの有名な新聞パリジアン紙が買われた。グループ・アモリーの所有だったがフランス第一の富豪であるベルナール・アル ノー(LVMH)グループが 買った。金さえあればメディアを支配できるという雰囲気が心配されている。国立社会研究所(CNRS)のドミニック・ウォルトン( Dominique Wolton)氏は、情報がなくなれば暴露 記事も無くなり、閉じられてしまう。今の状態から、どうしてジャーナリストがこのアルノーの買いを受け入れているのかは私はよくわかる。しかし一年後に大 きな問題が出てくるだろう。原発、教育、戦争の各方面で何もいえない状態になってしまうということだ。それが戦争におけるメディアということと同じことな のだ。5月27日の国営ラジオフランスアンフォがインタヴューしている。


ベルナール・アルノー氏というのは仏高級品製造のルイ・ヴィトンやシャンパン会社のLVMHグループの社長で、フランスに税金を払うのを嫌い、税金の安いベルギーにパスポートを要求していた人で、労働大臣からの通報でフランス全土にその失態がさらけ出されたので有名だ。

パリジアン紙は独立した庶民の新聞だと一応は見られる面が強かったのだが、新聞の発達がパリの上流階級の商品所有と関係があり広告などが庶民離れした掲載になっていた。これは新聞の経済的根拠とニュース視角のズレを矛盾しながら持ってきていたということだろう。

パリジアン紙は既にアルノー氏の所有する経済紙レゼコー(les echos)と共に毎日40万部が売られ、25000万ユーロ(約375億円)の売り上げ高を誇ることになる。労働組合の共産党系労働者の力(FO)のメ ンバーは新しい株主になり資本投下があることを希望している。あとはこの庶民的な名前を持つ新聞の位置がどうなるか見てみないとわからないが、LVMHと の戦略的交渉になると思うと発言した。

メディアの大専門家である国立社会研究所(CNRS)のドミニック・ウォルトン氏は、 ベルナール・アルノー氏がパリジアン紙を買った理由について解説している。パリ ジアン紙が庶民的な新聞だなんて可笑しな見方であるとして、その認識の馬鹿さ加減は、19世紀初めから常に新聞は権力と金持ち層の関心を炊きつけてきたの であり、もし新聞やテレビの所有者であれば社会や市場に影響を与えることができるわけであった。もしもそうでない場合には、パリジアン紙が金持ちの会社に 買われたことを考えると、その会社の敵に対してメディア防衛ができるということだろう。

フランス最後の日刊紙といわれてきた中産階級の中に広く読まれている権力から独立した新聞でその意味では庶民紙パリジアン紙はすばらしい新聞だ。

国立社会 研究所(CNRS)のドミニック・ウォルトン氏は、経済紙レゼコー(les echos)にアルノー氏が関心を寄せたのはわかるが、パリジアン紙の政治的戦略もあるだろうが、問題はその裏面にある。経済的にインターネット新聞の進 出や新しい経営モデルが出ないまま経営が悪化しているなかでのLVMHの買いとなったわけで、これは解決されてないので、再度問題になってくるはずだ。そ うすると、それまでしてなぜこれを買ったのかの理由がわかる。

ウォルトン氏は、新聞の最も大事なものは何かに関し て、それは銀行や金持ちや贅沢層などが新聞を買っても、ジャーナリストが独立していることが大事で、メ ディアの豊かさはジャーナリストの独立性にあるのであって金や技術などその他ではない。どんなふうにしてジャーナリストの立場を保存し育てるかが問題に なっているはずだ。

LVMH傘下の他の従業員やアルノー一家と同じような問題を抱えるのではないかとの国営ラジオフランスアンフォの質問には、問題の焦点 はそこには無いのであって、どうして破産しそうなメディア業界にあって経済的に強力なLVMHがそこに資本投下してきたのかという疑問なのだとジャーナリ ストの質問を切り返した。ここで別のジャーナリストが言葉をさえぎってしまった。150年前のメディアの状態に戻るわけだ。