2016年5月11日水曜日

ベッタンクール精神薄弱乱用裁判 裁かれる4人、無罪放免になった4人

(パリ=飛田正夫2016/05/11 4:47日本標準時)2012年のサルコジ前大統領の仏大統領選挙資金集めで、フランスの大手化粧品会社ロレアルの大株主で、仏第2位の富豪ベッタンクール婦人(現在93歳)はアルツハイマー病になって看護がなされている。2006年から2011年の間に、サルコジ前大統領が多額の現金を受け取ったという事件は、ナンテール裁判所からボルドー裁判所のジャンティ判事の所管へと移って、今も続いている。その中で、精神薄弱乱用などの犯行容疑では、これまで判決が出なかった8人の内の4人が、今回5月10日から5月27日まで裁判が行われる。

5月27日までに裁判で裁かれる4人とは?

写真家でベッタンクール婦人の親しい友人であったフランソワ・マリバニエ(François-Marie Banier)氏68歳は、婦人の精神的な弱さを利用して総額数百万ユーロの絵画や毎月100万ユーロ(約1億5000万円)もの小遣いや、保険も賭けてもらったことなどを否定している。6カ月の執行猶予付き3年の禁固刑と35万ユーロ(約5250 万円)の罰金刑が要求された。特にベッタンクールさんには1臆5800万ユーロ(約237臆円)の損害賠償金の返済が義務づけられている。マリバニエの婦人のマルティン・ドオルジバル(Martin d'Orgeval )には18カ月の禁固刑と罰金15万ユーロ(約2250万円)が求刑された。


ベッタンクールさんの管財人のパトリス・ド・マイストル(Patrice de Maistre)67歳は、この時期にサルコジの元財務相のエリック・ブルト氏の妻のフローランスさんを同氏の管財会社に雇った人だ。その返礼にマイストルはフランスのレジョンドヌール勲章を貰ったといわれていたひとで、今回の裁判では12カ月の執行猶予付き30カ月の禁固刑と25万ユーロ(約3750万円)の罰金が要求された。更にベッタンクール婦人への損害賠償金として1200万ユーロ(約18臆円)が課せられた。マイストルの弁護士のパスカル・ウィリアム(Pascal Wilhelm)54歳には290万ユーロ(約4億3500万円)の罰金となっている。

ベッタンクールさんに投資させた企業家のステファン・クルビ(Stéphane Courbit)51歳には25万ユーロ(約3750万円)の罰金が処せられたが、上訴した。

登記人のパトリス・ボンデュエル(Patrice Bonduelle)53歳も一味として裁かれる。カルロス・カジナ・ヴェジャロノ(Carlos Cassina Vejarano)氏はケニアの東100キロのベッタンクールさん所有のセイシェル(Seychelles)島の管理人であったが最近死亡している。同氏への処罰は殆ど無いとされて来ている。


▼ベッタンクール邸での会話盗聴録音とは

いずれもこの裁判はリリアンさんに対する精神薄弱を悪用した侵害裁判だが、これはマリバニエに母親の遺産金を総て持って行かれるのではないかと心配した娘のフランソワ・ベッタンクールーメイヤー(Françoise Bettencourt-Meyers)さんが心配して告訴した民事訴訟から始まった事件で、最初はサルコジ前大統領へのベッタンクールさんの政治資金現金受け渡し事件とは別個にあったものである。パリ西郊外の高級住宅地ヌィーのベッタンクール邸宅で下僕を務めていたパスカル・ボネフォア(Pascl Bonnefoy)氏がベッタンクール婦人と管財人のパトリス・ド・マイストルとの会話を盗聴録音した。この中にリリアン・ベッタンクール婦人の脱税と共に、サルコジ氏などの政治家の名前が二人の間でかわされたのがインターネット新聞の「メディアパー」とル・ポワン誌とによって、ネットで公開された。当時の政治献金との関係で疑惑視されていた。


▼サルコジの携帯電話盗聴事件とは

ベッタンクール事件は様々な人物を巻き込んで、別の事件と複雑に絡まっているために、タコの足の様な事件だといわれている。既にこの婦人の精神薄弱乱用面での容疑ではサルコジ前大統領は無罪放免の判決が下っている。しかし、このベッタンクール裁判での裁判運営が気になっていたサルコジ前大統領は、最高裁判所内の動きに詳しいジルベール・アジベール(Gilbert Azibert)裁判官を使って、裁判所内部の情報提供と引き換えにアジベール裁判官が退職後に希望していたモナコ公国の審議員の地位が得られるように計らう事を約束した。サルコジ前大統領とその弁護士チェリー・ヘルゾーグ(Thierry Herzog)が相談しあってアジベールを動かす相談をしている会話が、警察の盗聴器に引っかかってしまった。

この盗聴は、2013年9月に司法検事は別件容疑でサルコジとその弁護士との盗聴を決定していたものだ。これがサルコジ前大統領の盗聴事件と言われる権力関与や職業機密侵害、職権乱用が問われるもので、サルコジ陣営にとっては非常に危険な裁判の一つとなって新たに出てきたものである。

この時に使っていたサルコジの携帯電話は、ヘルゾーグ弁護士がサルコジとの連絡用としてモナコに近いニースで、ポール・ビィスムスの偽名で購入しサルコジに使わせていたもの。実際に、サルコジの介入はモナコまで行ったようだが、現地で盗聴されているのを察して、実行は中止された。


▼精神薄弱乱用面でのベッタンクール裁判で 既に無罪放免はサルコジ氏とブルト氏など4人

このベッタンクール事件の精神薄弱乱用面での裁判では、サルコジ氏の他にこれまでに無罪職免されたのが、元財務相のエリック・ブルト氏でサルコジ前大統領の選挙運動の金庫番であった。アラン・トーラン氏はベッタンクールさんの看護士である。ジャン・ミッシェル・ノルマン氏とあと二人は上訴したがその内の一人は最近に死亡した。ベッタンクール事件は昨年5月4日に証言したベッタンクール邸宅の前会計士のクレール・チボー(Claire Thibouit)さんが,リリアン・ベッタンクール婦人の娘フランソワ・ベッタンクールーメイヤーから70万ユーロ(約10500万円)の退職金を受け取っていて、偽の証明書などで偽証していたとみらている。まだこの事件は多くの凧の手足を左右前後に伸ばしていて終わったとはいえないのである。

【参考記事】
http://www.francetvinfo.fr/societe/affaire/les-affaires-sarkozy/nicolas-sarkozy-la-justice-valide-les-ecoutes-telephoniques_1371937.html
http://www.francetvinfo.fr/societe/affaire/les-affaires-sarkozy/nicolas-sarkozy-la-justice-valide-les-ecoutes-telephoniques_1371937.html
http://www.leparisien.fr/faits-divers/affaire-bettencourt-l-ami-de-liliane-de-retour-au-tribunal-10-05-2016-5782545.php
http://www.franceinter.fr/depeche-proces-bettencourt-francoise-manque-a-lappel
http://www.challenges.fr/france/20160510.CHA8940/proces-bettencourt-acte-ii-banier-a-l-offensive-sur-fond-d-imbroglio.html
http://reunion.orange.fr/video/actu/la-justice-soupconne-la-fille-de-liliane-bettencourt-d-avoir-achete.html

http://www.francetvinfo.fr/politique/affaire/affaire-bettencourt/?gclid=CjwKEAjwjca5BRCAyaPGi6_h8m8SJADryPLhcVYLej3sgYjn-w9VpkgSkQQOIvQNh2rWTSfOm_MZ5RoCnkvw_wcB
http://www.bfmtv.com/societe/abus-de-faiblesse-contre-liliane-bettencourt-quatre-prevenus-en-appel-972974.html
http://www.20minutes.fr/bordeaux/1842831-20160510-affaire-bettencourt-ouverture-proces-appel-abus-faiblesse