2011年1月26日水曜日

米国のTGV入札にブレーキ 仏謝罪はロマ人排斥に端緒、ユダヤ人強制収容所輸送を米は髣髴


フランス国鉄(SNCF)のギヨームー・ペェピ総裁がナチスの強制収容所への輸送で米国への謝罪が話題になっている。同総裁はこれを否定するがSNCFが米国での超特急列車(TGV)入札権の獲得のためだと見られている。フランス政府はその2010年の夏からロマ人追放と国外排(はい)斥の大キャンペーンを展開していた。これが米国の人種差別問題の専門家である「ユダヤ人虐殺の教育普及と資料センター」副会長のロジッタ・ケニスブルグ女史の目にとまった。ユダヤ人輸送とのイメージで疑問視されたフランスは米国でのTGV敷設権を失う危険が出てきた。そのためにペェピ総裁は謝罪の文書を米国側に提出した。きっかけはサルコジ大統領の夏のグルノーブル宣言に端を発するフランスのロマ人排(はい)斥の跳ね返りということであった。


戦中のユダヤ人排斥で、ドイツのナチス収容所輸送を唯一フランス国鉄が取り仕切って実行していたからである。動物を運ぶ三等列車でユダヤ人だけでなくチガンやジタンと呼ばれるロマ人がパリ東部郊外のボビニーの駅から送りだされていた。2010年の夏にペェピ総裁は米国でユダヤ人団体への謝罪に奔走していた。


1月26日ペェピ総裁は27日の「大虐殺と人権犯罪予防の日」を前にボンディの平原の旧ボビニィ駅の廃墟の前に立ち話をした。この場所は2005年に共産党の意向で「記憶の土地」に指定されている。

総裁は「その当時の国鉄の行為として」 「ユダヤ人を収容所へ送ったことを我々は忘れない」 「残念なことだ。後悔している」、ドイツナチスに「国鉄は強制徴収されていた」などと述べている。「これ以上のコメントはない。総てをいった」ということらしい。謝罪の言葉が無かったのではと指摘するメディアもあった。

総裁は米国向けの話しなのだろうが「ナチスに抗議したり強制収容所送りになたりして2000人の鉄道員が死亡している」と余り知られてないことも話している。

特筆すべきことには、ペェピ総裁はシラク前大統領の1995年7月の「現代ユダヤ資料センター」ショーワ(Memoire de la Shoah)での追悼を引用したことだ。

「その黒い時代の澱(よどみ)は我々の歴史にはなく、またフランス人とフランス国家によって促進された気の狂った犯行は我々の伝統と過去を侮辱するものである」

2006年に、この問題でSNCFに600人が訴訟を出している弁護士のアビ・ビトン氏はこのペェピ総裁の言葉に、「謝罪の荘厳した文句だけではなくて、犠牲者の補償は何もなされてない。補償をすべきではないか」 と批判している。 

フランスから鉄道でナチスのユダヤ人強制収容所へ送られたユダヤ人は、1942年~1949年間に76000人が数えられている。ボビニー駅からは22.407人以上がフランスの国鉄(SNCF)の貨物車でドイツの強制収容所へ送られた。

フランス国営放送・テレビA2は、フランス国鉄の契約がカルフォルニア州とフロリダ州の2箇所の敷設でそれぞれ3600万ユーロ(約43億円)と200万ユーロ(約2憶4千万円)の商高を獲得するためだと強調して伝えている。

フランス国内でのロマ人排(はい)斥は、昨年2010年の夏のサルコジ大統領のグルノーブル宣言(7月30日)から始まった。まるでユダヤ人狩りの歴史を髣髴させるものだとして欧州人権諮問委員会など人権擁護の関係団体や野党は勿論、キリスト教の牧師、ローマ法王ベネディクト16世までもが注意の意見を出して全欧州を巻き込んだ大論争になっていた。フランス内務省からロマ人を人種的に差別指定した公文書の知事通達が出されていたことなどが暴露されていた。



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2011年1月26日水曜日

ベンアリ前大統領とその妻レイラ 及び一族に チュニジア裁判所が国際指名手配の逮捕状

1月26日昼過ぎ、チュニジアの裁判所は14日に国外逃亡をはかったジン・アビディン・ベンアリ前大統領とその妻レイラ・トラベルジィとその一族を「動産・不動産の不法取得」と「外貨の不法持ち出」などで国際指名手配の逮捕状を出した。 

 

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