2013年11月12日火曜日

ロレアル億万長者の盗聴録音機に、仏大統領や財務大臣も登場

フランスの大手化粧品会社ロレアル社長で世界有数の富豪であるリリアン・ベッタンクール(87)さんの旧使用人の一人が広間に盗聴機を仕掛けてリリアン(Lilian)さんとその相談役などの会話を録音した。その録音機器を受け取った娘のフランソワーズ・ベッタンクール-メイエさんは、これを警察に通報。録音機には財政や司法問題に関したサルコジ仏大統領の話しやエリック・ウォルス財務大臣など国家の重要人物の名前が登場している。これが大騒ぎになっている。事件をスクープしたのは14日のインターネット新聞のメディア・パー社だ。(本文の初出 / 公開日時: 2010年6月19日 @ 15:58 )

フランス国営放送ではテレビ3チャンネルが18日深夜になって報道した。国営放送・A2などはサッカーW杯のフランスチームの報道などで、時間切れなのかこのニュースはまだ報道はされてないようだ。

盗聴録音の内容は財政操作での脱税の話しや、司法手続きでの大統領官邸エリゼ宮殿の干渉の話しも出てくる。またスイスの秘密口座の話しやリリアン・ベッタンクールさんの遺産相続の会話のやりとりも録音されている。

例えば、2010年4月23日に盗聴録音された私的な会話がある。これは、リリアンさんの財産管理を担当するパトリス・ド・マイストル氏が、パトリック・ウアーという人物と電話で話した内容を、リリアンさんに伝えているものだ。

パトリック・ウアー氏というのはラシダ・ダチ前法務大臣の時代に、「実際の法務大臣」と呼ばれて影で権勢をふるっていた実力者である。モエ ヘネシー・ルイヴィトングループ(LVMH)の利益のために、2009年11月30日に大統領官邸エリゼ宮殿を去るが、2007年5月の任命以来サルコジ大統領の司法相談役を努めていた。

メディアパーは多くの情報から見て、ウアー氏はエリゼ宮殿を去ってからもサルコジ大統領の難しい司法問題には相談役として参加し続けているとみている。今年1月のドミニック・ドゥ・ビルパン前首相を被告とするクリアストリーム事件の裁判でも、同氏は原告のサルコジ大統領側の会議に出席していたという。クリアストリーム事件はフランス政府の台湾へのフリーゲート艦船の売り込みにまつわる手数料疑惑で、ルクセンブルグの銀行口座が使われていたとするものだ。
オルレアの大株主(27.5%)を持つリリアンさんはパトリス・ド・マイストル氏の進める訴訟のなりゆきを心配している。ド・マイストル氏が、この人物ウアー氏との電話会話の内容を、リリアン・ベッタンクールさんに話している時の盗聴録音は次のとおり。

リリアンさん ──情報とか、なにかあるのか?

ド・マイストル氏──私の得た情報は一つだけしかない。ニコラ・サルコジ大統領の司法相談役をしていたウアー氏はエリゼ宮殿にはもういない。しかし、彼の役職が誰かによって替えられたのではなく、私の好きなベルナール・アルノーの所で働いている。彼は私に、別な日に会いたいといっている。そして私にいうのには、ド・マイストルさん、大統領は身近にそのなりゆきを見守っています(・・・・・)。第一審はそれ以上どうすることもできない。しかしあなたにいえることは、検事は非常によく、よく知っている人だから、控訴院で負けるようなことはないだろう。大丈夫だということだ。

ド・マイストル氏はこの会話があったことを認めているが、大統領官邸エリゼ宮殿ではこれに対して何もコメントをする事はないといっているという。メディアパーはこの会話の内容からすると、2008年末に明らかに大統領と大富豪リリアンさんとの特別な会見の合意までできていたと取れるという。

メディアパーは盗聴録音に出てくるのはサルコジ大統領だけではないといっている。しばしば話題にのぼってくる政治家では2003年以来与党国民運動連合(UMP)の会計役を務めていた大金持ちの税金を軽減する防御税で知られるエリック・ウォルス予算大臣(2007年5月から2010年3月)がいるという。ウォルス氏の夫人フローランスさんは2007年から2010年の間、リリアンさんの財産管理を担当するパトリス・ド・マイストル氏の許可でもって、リリアン・ベッタンクールのクリメーン社で働いていた。

2010年4月23日にパトリス・ド・マイストル氏はリリアンさんに、「自分がフローランスさんを雇用したことが誤っていた」と打ち明ける。「彼女を雇用した時に彼女の夫は財務大臣に就任していた」、「それで、もしよければ、騒ぎを起こさないために、わたしは彼女の夫にあってくるべきだと考えている。ネッスルとの訴訟のことを彼にはなす。多くの操作をしなければならない。彼の夫人はもういらない。それで、彼に、彼に、彼に金を上げなければならないということだ。だってそれは非常に危険だから」

パトリス・ド・マイストル──バレリー・ペクレス高等教育・研究相はパリ審議会の議長になる選挙をしている。負けるだろうが、あなたの支援を彼女に示さなければならない。それにはあまり金はかからない。二番目は財務大臣だが同様に応援しなければならない。そして三番目はニコラ・サルコジだ。

リリアンさん ──それじゃ、プレクレスのためにおげよう。

パトリス・ド・マイストル──そんなに高くない。

リリアンさん ── 彼女がその値段を要求したの。

パトリス・ド・マイストル──いいや、これが最低基準だろう。それは7500、だから高くはない。現在友達だし、バレリー・ペクレスにはこれを。エリック・ウォルス、財務大臣にはこれで。それでよい、たかくない彼等は喜ぶだろうと思う。

リリアンさん ──それと、ニコラ・サルコジには?

パトリス・ド・マイストル──それは済んでいる。その中に。

(以下省略)

メディアパーによると、盗聴録音は2009年5月から2010年5月までにわたって行なわれ、使用人はリリアンさんたちの処遇に対し復讐したいと考えていたという。

盗聴は、パリの西側のブローニュの広大な森に隣接する高級住宅街ヌィー・シュール・セーヌ市のリリアン・ベッタンクールさんの私邸で録音されたものだ。サルコジ大統領は同市の市長であった1983年から2002年にはリリアン・ベッタンクールさんの家でよく食事にきていたという。

リリアンさんは母親の相談役であるフランソワ・マリ・バニエ氏に悪い影響を吹き込まれているのではないかと心配していて、母親を悪用している疑いで7月に裁判が予定されている。

リリアンさんの弁護士ジョルジュ・キエジマン師は、実の娘によって仕掛けられた盗聴の手口というものは、「全く尊厳を失っており」、また「私生活への侵害」だとして訴えている。

フランソワーズ・ベッタンクール-メイエさんはリリアンさんの一人娘であるが、母親の巨額な財産が散在されて自分には相続されないのではないかと前から不振を抱いていた模様。それは、しばしば健忘症に陥りがちのリリアンさんの周辺に、財産から私生活までを管理・協力するフランソワ・マリ・バニエ氏という人物がいるからだ。

この家族の財産相続問題とは別に、政府・国家の要人と大企業の大金持ちとの関係に新たな疑惑がもたれている。この点での今後の事件の行方が心配される。

(参考記事)

(Charente Libre)2010年6月17日
(LA REPUBLIQUE)2010年6月17日