この宗教が天皇制に大きく関係しているということを何度か本書で網野氏は喚起をしているのだが、ただしそれを論理付けて詳しくは話しはしなかった。
天皇制における神道と仏教の問題は大きいはずなのに一言も話されてないのはどういうわけなのだろうか。外来性を問題にしながら仏教を保護しようとした曽我氏やそれに反対した物部氏との闘争が論じられていない。そこから神道と天皇は鎌倉時代頃に仏教の体系の中に移し置かれ天照大神や八万大菩薩も、仏教の機能神としての位置付けが再定義されていたことにも論及がなされてなかったのはどうしてなのか?
天皇の神権性ともいうべき神との繋がりがどういう風な形で婚姻の構造からでもいいが、これを上野さんも論じていないのは不思議であった。神武天皇の母親が竜女であるとする神話に関し話がなされなかったのが残念であった。
これらがすでに宗教的な人間の救済論として天皇である中世には存在したのであって、そこから天皇を神としない天皇制廃止の道も豊かな戦略で鎌倉時代には明らかにされていたわけだが、これも論じられなかった。
日本の歴史学や人類学のこの方面の研究は3者ともやることが多すぎるほどあるということを言っておられるが、そういう現状をいう事でいいわけをしたのだろうか。あるいは知らない事は言わないという知的禁欲を守ったためなのか。
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