これを喜び支持するのが2015年のテロ襲撃事件を経験して、外国人嫌いになって右傾化している現在のフランス人の意識なのである。
サルコジ前大統領も移民の国籍を剥奪するグルノーブル宣言を出していたが、同じではない。その違いはサルコジにあっては移民に特化してスティグマ化したもので、外国人移民の子弟だけの犯罪に限り、その再犯者に対しフランス国籍を取り上げるというものであった。フランス人の子弟の再犯者には国籍を取り上げることを免除していた。その為に人種差別が問題になっていたのだ。
これに対し今回、オランドの提出しているのは、二重国籍のフランス人を対象にしているということである。逆にいうとオランドの場合にはフランス国籍しか持ってなければ、外国人移民の子弟の場合であっても、国籍は剥奪されないのである。サルコジの場合には国籍がない人間が出る可能性があったので、そういうことを仏政府が行うことは人権違反の問題もあったのである。
トビラ法務大臣の問題はこのようなフランス社会の右傾化するなかでテロ襲撃事件を移民や外国人という人種的な枠に押し込めてそこで解決するという、フランス国民の対外的な差別意識や優越意識を満足させる方策とされているのが、納得できないようだ。トビラ法相の後任には社会党(PS)議員で法律審議会議長のジャン・ジャック・ウルヴァア氏が就任する。