7月16日、ダライラマが米国のオバマ大統領とホワイトハウスで会見したことは、中国国内の分離派勢力に力を添えることになることは当然のこと米国側は承知なはずである。それを知っていて会見したことはたとえ人権擁護や宗教の自由を縦に宣言したとしても現実には逆効果になる。オバマはこのことを当然考慮しての政治行動と理解すべきである。但し、中国の反発をオバマ大統領が予測していても相手がチベット教の宗教指導者であるだけに、オバマには予想できない悪い結果の帰結が心配される。このことをオバマ大統領は理解できないらしい。(JST 11/07/17/11:39)
フランスではベルナール・アンリー・レビィ(BHL)という哲学者がサルコジ大統領に取り入ってリビア戦争を開始した。この戦争は現在は泥沼の中にあり、当初の市民殺害ゼロの宣言どころか、多くの非戦闘員の婦女子や市民が殺害されている。これはカダフィ側だけでなくフランスを初めとする北大西洋条約機構軍が人を殺害するという戦争犯罪と人権違反の行為でもある。国連条約の市民擁護の思想とはあまりにもかけ離れているわけだ。
このフランスの哲学者BHL
の知恵ではサルコジ大統領を救えないどころか、リビア戦争を勃発させた戦争犯罪の疑惑が残るであろう。下ノルマンディの首都カーン市で市民大学を開講している哲学者で思想家のミッシェル・オンフール氏は、リビア戦争を勃発させる前に平和裏の交渉が先ず何度も行われる必要があったといっている。そういう事前の平和交渉がぜんぜんなされずにその努力が欠落しているのがサルコジのはじめたリビアへの空爆だと指摘した興味深い文章がマリアンヌ誌(20011年4月23-29日号)に掲載されている。
そこで、同氏は戦争とフランス哲学者の介入関係をサルトルとかマルローを例に出して話している。オンフール氏は、
BHLの思想の中に自分たちの血が流れるよりも他国の人々の血が多く流れることに鈍感な感覚があるのだという指摘をしている。
大統領や首相というのは世界の古今東西を問わず、側近や哲学者・宗教者に影響されがちだが、その側近や哲学者や宗教家というのは大統領側のその政治的困難の実態を大変によく承知していて手を差し伸べようとするのである。そのために、ダライラマやBHLなどが国の指導者に近づいて物語を囁くわけだ。問題はその質と内容にある。
今回のダライラマとオバマとの会見は秘密裏でジャーナリストが直接に立ち会う証明は得られてないという。チベットの国際宣伝キャンペーンのスポークスマンの話がニュース源になっている。こういう秘密主義の会談が、そもそもすでに民主主義にとって危険なのである。オバマ大統領はダライラマの思想を取り込んだつもりで、じつは逆に米国内部を破壊分裂に導く毒薬を密かに呑(のみこ)むことになってはいないだろうか。