2015年10月7日水曜日

バルビィや独裁者ミィロスヴィチを擁護し サルコジ大統領を告訴した ベルジェス弁護士のことを考えた

ナチスや独裁者を擁護し サルコジ前大統領を告訴したベルジェス弁護士のことを考えたそれは、裁判で勝っても負けても、たとえば福島原発事故で被害にあった人たち、あるいはシリアやリビアなど中東やアフリカからの欧州共同体へ流れ込む難民や、すでに戦争で殺害されてしまった犠牲者たちというのは、裁判の勝敗では救われないのではないかということだ。それらは、判事や弁護士の司法の世界をはるかに超えているのである。例えば、昨年8月に88歳で亡くなったフランスの有名な弁護士で、ナチのクラウス・バルビイやセルビアの独裁者ミィロスヴィッチ、テロリストのカルロスなどの悪人たちを防衛弁護したジャック・ベルジェス弁護士だ。(パリ=飛田正夫2015/10/07 6:43日本標準時)

ベルジェス師の考え方は、「訴えがより重いほど、より大きな擁護をすべきだ。例えば医者が総ての人を治療するように」と述べている。そしてベルジェス師は、「しかしそれは、彼等が無罪を主張しているという条件の上でだ」と述べている。それならば無罪を主張しない悪者はいないのか?そして、医者がみんなに治療の手をさしのべたとして、悪者は裁判で完治して、救われてしまうのだろうか?と問いたくなる。

ベルジェス弁護士の考えは、例えば「時限爆弾は、それを仕掛けた人が問題なのである」というものだ。だから彼は、コートジボワールのクーデターのアラサン・ワタラをフランスは支持したが、ベルジェス弁護士は独裁者ローラン・バグボ大統領を擁護したのだ。また、サルコジと哲学者のベルナール・アンリー・レヴィ(BHL)の二人だけで決めて、独裁者カダフィのリビア空爆を開始したが、ベルジェス弁護士とロラン・デュマ弁護士(元郵政大臣)は、リビア空爆の責任者であるサルコジとBHLとを国際人権裁判所に起訴した。 

今のシリア難民も同じことで、難民はイスラム主義国家組織(IS/EI)だけのせいではなくて、その前にシリアの反体制蜂起の市民を拷問し、化学兵器や戦車で虐殺したのはアサドであった。これが今、国際人権裁判所に訴えられているが、もしベルジェス弁護士が生きていたのなら、シリアを告訴したであろう。

 しかしながら、戦争や原発事故で難民となって生まれ故郷を離れ流れていく苦しみ、あるいは死亡したり殺害されたりした者たちは勿論のこと、国を失い家族を失って、生き延びるために独裁者から逃れ流れてきた人々にとって、いったいどのようにして裁判所の法廷は裁きを与えることが可能なのか?それで彼等を救えるのか?という、法廷の司法の世界の限界を超えた根本的な疑問が残るのである。

 ジャック・ベルジェス師はそのような自分の職業と裁判の限界に疑問を抱いていたから、独裁者を擁護し大統領を告訴したのではないのか。