2016年1月13日水曜日

仏のベッタンクール裁判が逆転勝ち ジャーナリストの盗聴録音利用は「公共の利益擁護」で無罪放免に

(パリ=飛田正夫2016/01/13 3:18日本標準時)インターネット新聞の「メディアパー」のジャーナリストと、週刊誌「ル・ポワン」のジャーナリスト、及び世界的に有名なロレアル化粧品会社の大株主リリアン・ベッタンクールさん(93歳)を盗聴した召使い頭のパスカル・ボネフォア(Pascal Bonnefoy )さんらは、個人の私的生活の秘密侵害が昨年に認められて有罪になりインターネット上から記事が消されていた。しかし、9日にベッタンクール事件を担当しているボルドー裁判所は、召使い頭とジャーナリストの全員に無罪放免の逆転判決を宣言した。メディアの自由が回復された思いである。裁判官は、召使い頭は何の報酬も期待していなかったし、またジャーナリストたちの真摯な仕事は公共の利益を守ったものだと評価している。

訴えられていたジャーナリストの5人とは、「メディアパー」のジャーナリストのファブリス・アルフィ氏とファブリス・ロム(現在は「ルモンド」)氏と、ル・ポワン誌のジャーナリストのエルヴェ・ガテンゴ氏、及び「メディアパー」のエドウィ・プレネル会長とル・ポワン誌の編集長であったフランツ・オリヴィエ・ジスベール氏である。情報公開が私的生活を侵害したとして告訴されていた。

仏第2番目の大富豪であるベッタンクールさんの遺産相続人である娘が、周囲の取り巻きによって金を騙し取られていると思い、2009年と2010年に元召使頭を使って盗聴を行ったもので、その録音テープは娘に渡されて、それが警察に届けられた。そのコピーの一部がインターネット新聞の「メディアパー」とル・「ポワン誌」に流れて2010年6月に一般公開されて、大騒ぎになった。この事件はタコの足のように広がる不思議な事件でいまだに終わってない。

サルコジ前大統領やその金庫番であった当時の財務大臣エリック・ヴォルツ氏もベッタンクール邸宅に通って来ていて、二人はこれを否定しているが、気前のよいベッタンクールさんから政治資金の現金封筒を受け取ったと見られていた。今はヴォルツ氏の容疑は無くなっている。

そのテープによると、サルコジや、今回イルドフランスの地方選挙で当選した?ベッタンクール婦人が録音テープの中で呼ぶサルコジ派のペルクレス?という名前などに金を渡したとして記録されていた。

母親の遺産が母の男友達のフランソワ・マリ・バニエに横取りされるのではないかと心配した娘から始まった家庭内の争議であったが、この不法録音テープの取得によって、また、婦人の衰弱が狙われて悪用されていたこともわかっている。
娘のフランソワ・ベッタンクール・メイエさんは2008年にバニエを訴えていた。この裁判を担当したナンテール裁判所の判事がサルコジの任命したフイリップ・クロワイエ判事に変えられてこの家庭内騒動事件は不思議にも無かった事にされ閉じられてしまった。

フランスの政治家と大企業家との金を介した繋がは国家問題にまでなっている。2015年5月に有罪になったフランソワ・マリ・バニエなどは婦人の精神的虚弱さに付け入っていたことが、公共の利益を隠さなかったメディアによって暴露されたわけで、今回の逆転判決の意義は今後のメディアを元気づけたといえる。
【参考記事】
http://www.lemonde.fr/enquetes/article/2016/01/12/affaire-bettencourt-les-cinq-journalistes-et-l-ex-majordome-relaxes_4845971_1653553.html
http://www.lepoint.fr/justice/affaire-bettencourt-une-victoire-pour-la-liberte-de-la-presse-12-01-2016-2009237_2386.php
http://www.lavoixdunord.fr/france-monde/proces-des-ecoutes-de-liliane-bettencourt-les-cinq-ia0b0n3266405
http://www.lejdd.fr/Societe/Justice/Proces-des-ecoutes-de-Bettencourt-l-ex-majordome-et-les-journalistes-relaxes-768169
http://www.liberation.fr/france/2016/01/12/affaire-bettencourt-l-ex-majordome-et-les-journalistes-relaxes_1425928