リビアのムアマル・カダフィは17日夕刻の国連安全保障理事会の投票直前には「リビア東部の蜂起民衆の居城であるベンガジを攻撃する」とリビアのテレビで放映していた。しかし夜になって、カダフィ大佐の息子のセイフ・アル-イスラム氏からは「父親はベンガジには直ぐに入れないと見たようだ」、「人権擁護の立場から意見が変わったらしい」とCNNで伝えたという。カダフィはフランスが放棄した「人権擁護」のお家芸を逆手にとって臆面もない作戦に出たのではと見られている。
リビアのカダフィ軍を空爆攻撃行使を提案していたフランスと英国は国連安全保障理事会の3月17日夜の投票で15カ国のメンバーのうち中国、ロシア、ドイツ、インド、ブラジルの5カ国が棄権したが、仏、英、米など10カ国の賛成で承認された。あらゆる方法でリビア市民の安全を保障しリビア軍の攻撃をやめさせる空爆措置の行使が承認された。またリビアのカダフィ軍隊の飛行機が蜂起側への爆撃を防ぐために領空権の剥奪が決められた。
ドイツのグイド・ウェステルメル(Guido Westermelle)外相は「リビアでの軍事介入への参加は予想できない大きな危険を持つ、一人の軍人も参加しない」と宣言している。
北大西洋条約軍事機構(NATO)は18日に28カ国のメンバーが会議をもち国連安保理決議案の結論を話し合うという。アラン・ジュッペ仏外相はこれに時間をとられないよう、空爆を急いでいるらしい。
リビア防衛省スポークスマンは、地中海域の海上で動く物体はすべて攻撃対象になると以前は宣言していた。17日のリビア軍のベンガジ襲撃では蜂起民衆が2機の飛行機を墜落させたといっているが、その確認情報はないと「ヌーベル・オブセルバトワー誌fr.」はいっている。
これまでにカダフィ軍がトリポリから東に200キロ離れたミスラタ(Misrata)や、ベンガジに150キロ手前のズワイティナ(Zuwaytinah)などの町で失地奪還に成功したと伝えられてきた。
チュニジアから始まった独裁者排斥の「アラブ諸国の春」の革命はカダフィ大佐のリビアまで押し寄せた。リビアでは2月15日以来の蜂起で数百人が死亡し30万近い市民が国外に逃避したといわれている。
リビアのカダフィ大佐はフランスのジャーナリストとの会見で、リビアの革命はチュニジアやエジプトの平和的な民衆革命とは異なっていると話した。リビアの民衆蜂起では機関銃や装甲車の重機が使用された革命であったとその特徴を指摘している。
カダフィの息子はユーロ・ニューステレビで記者会見して、フランスが世界で初めてベンガジなどの蜂起民の「反リビア政府臨時国家審議会」の組織化でテコ入れがあったとその内政干渉を批判している。
カダフィの息子はユーロ・ニューステレビで記者会見して、フランスが世界で初めてベンガジなどの蜂起民の「反リビア政府臨時国家審議会」の組織化でテコ入れがあったとその内政干渉を批判している。
フランスのサルコジ大統領の提唱から始まったカダフィ空爆の主張は、フランスの伝統であったはずの人権擁護の人道的主張とは余りにも隔たってしまっていた。今度は独裁者のカダフィ大佐が、人権擁護はオレの十八番(オハコ)なのだとい出だしているわけだ。