2011年12月16日金曜日

シラク、仏大統領として「初の刑務所入り」、20年後に「大統領特権」が崩壊

フランスの大統領としては初の刑務所入り判決は歴史に残るものとなった。シラク前大統領(79歳)は裁判の上訴はしないことに決めているが、自分はいかなる不法な行為もしてないと主張し続け判決それ自体を否定し抗議している。シラク前大統領の裁判が20年後に判決が下ったのには次のような背景がある。
フランスは第二次世界大戦の荒廃と混乱の再建の中でドゴール将軍が第五共和制の大統領権限を強化した。大統領は在職期間は裁判ができないことや、防衛秘密として多くの犯罪や詐欺があった場合でも、情報資料の開示を拒否できる大統領特権をもうけた。その非常時の大統領特権が戦後の現在まで続いていた。

最近では現役大統領だけの機密保持だけでなくその周囲の者たちも同様な国家機密保持の特権の恩恵を受けられるような流れが出てきている。そのためにますます国家権力中枢に不透明な部分が多くなっていた。

ヨーロッパエコロジー・緑の党(EELV )の大統領候補であるエバ・ジョリ欧州議員は15日のフランス国営放送テレビA2で語り、現在のサルコジ大統領周辺でくすぶっているカラチ潜水艦売り込み仏人殺害事件や、リリアン・ベッタンクール政治資金受け取り事件などの一連の疑惑事件も、この大統領特権のベールによって真実が隠れているとしてその開示を要求している。

シラク氏はサルコジ氏とは派閥を異にしている。ドミニク・ド・ビルパン元首相が仏大統領選挙に立候補することが決まったために右派からの仏大統領選挙立候補者はサルコジ1人だったのが、サルコジ氏へのけん制がここにきて破れ、急激に膨れ上がっている。

フランス国営放送テレビA2などでは、極右派の国民戦線(FN)のマリーヌ・ル・ペンを同じ右派として括って見せていて、その数は6人を数えたとしている。しかし、いくら右派だとしても、極右派マリーヌ・ル・ペンの顔写真を一緒に掲載することはどうかと思える。それは決戦投票ではサルコジへ票として数えられると踏んでのことなのか。

ジャック・シラク前大統領は15日午前中に、90年代のパリ市長時代に架空職員雇用詐欺疑惑事件で信用及び公共財濫用が問われていたがこのほど、パリ軽罪裁判所から執行猶予付き2年の判決が下った。

シラク前大統領はサルコジ大統領と異なり、相撲が好きで日本びいきであった。毎年のポート・ド・ベルサイユで開催される農業物産展でも必ず訪れて人々の人気の的となっている悪いことをしてもあまり恨めないどこか、右派の大統領だが庶民的な素顔があった。