2013年11月11日月曜日

恐怖を培養するサルコジ仏大統領の政治に、ブタン前大臣が諫言

クリスティーヌ・ブタンキリスト教民主党(PCD)議長(前住宅・都市相)は14日の「パリジィアン」紙でサルコジ大統領陣営を批判して「恐怖を培養している」 「人々を対立させている」 「潜在的な暴力がある場合に、人々を対立させてそれを顕在化させるのは良くないことである」と諫言した。 サルコジ大統領によって奨められている外国移民の犯罪者を国籍剥奪することに対しては、その目的は我が同胞の不安定化を創り出すと見ている。ブタン議長は「フランス人の多くは大統領自身を初めとしてほとんどが先祖は外国人だ」という。 「どうしてそれを大統領は忘れたのだろうか?」と自問し、サルコジ大統領の先祖がハンガリー人であることを指摘して「大統領自身が暴力の製造元である。どうしてそれを忘れているのだろうか?」との疑問を披露した。
ブタン議長は与党国民運動連合(UMP)の議員たちが牢に入れて処罰しようとしている提案に対し敵対視した立場をとっている。キリスト教徒であるブッタン議長にとってはそのような「監獄につないぐというのは脅迫で」あって、それは先般、「家族扶養手当を出さなくする」と脅かしたのと同じことであって、採用できないものだと言っている。(本文の初出 / 公開日時: 2010年8月19日 @ 1:05  )

ブタン議長の発言の背景には7月末にグルノーブルでのサルコジ大統領による移民の国籍剥奪宣言がある。これは、移民の子弟が警察や国権の代行者へ暴力をふるった場合にフランス国籍が剥奪されるというものである。また非行のあった移民の青年は成人すると共に自動的にはフランス国籍を取得できなくするという宣言であった。このサルコジ大統領の発言を巡っては、国連や各種人権団体や野党議員などから人種差別の主張だとして、厳しい批判の声が上がっている。誰でも人は生まれながらにして平等であり、宗教や家系や財産、民族・人種の違いによって差別を受けないというフランス共和国の憲法に反するからである。

また、「旅の人々」と呼ばれるキャラバンで移動しているフランス国籍をもつ人々が警察に交通尋問のさいに車を止めなかったとして青年が射殺される事件があった。これはロワールのシュノンソー城に近いサンテニャンで検問を無視して逃走しようとしたとみなして射撃された。助手席にのっていた「旅の人々」の青年が死亡したもの。
この事件に油を注ぐように夏の間にフランス中にある300ほどの移民の不法テントやキャラバンやスクオッター(不法住居占拠者 squatter)箇所を撤去する方針がサルコジ大統領によって宣言された。ブリス・オルトフゥ法相がそれを実行する指揮の先頭に立っている。これまでの15日間ですでに40以上のキャンプやスクオッター(不法住居占拠者 squatter)が警察や機動隊によって撤去された。

そこに住んでいた「旅の人々」や「ロム」と呼ばれるブルガリア人やルーマニア人、フランス人たちが全国各地で戸外に投げ出されている。12日はパリ南郊外のショワジー・ル・ロワ市でロムの人々が100人ほどの機動隊に放りだされた。15日、パリ東のモントルイユ市やフランス西南部のボルドーでも「旅の人々」が機動隊に住居を取り払い移動を余儀なくされている。アキテーヌ地方の首都ボルドーでも同様な警察による立ち退きがあってそれに抗議する事件となっている。フランス国内の市民が分裂化させられている。こうした流れのなかでのブタン議長の発言であった。ブタン氏はサルコジ政権の大臣でありUMPの翼下にキリスト教民主党(PCD)を結成しその議長を努めている。

されにブタン議長の今回の発言の背景としては、エリック・シオチィ安全担当の与党国民運動連合(UMP)国家書記官の最近の提案がある。未成年の子供が犯罪の処罰を受けた場合には罰金3万ユーロ(約360万円)を払い父親か母親が子供の代わりに刑務所に入り刑期を送るようにするという法案のことである。親に責任を負わせることはサルコジ大統領の希望であり、それをエリック・シオチィ氏は信条にしているという。また、休校の多い子供(月に4度以上の無断欠席)の家庭には扶養手当を停止するという与党国民運動連合(UMP)の議案が6月初めに可決したが、同氏はその中心的な推進役であった。野党や父兄の組合はこのエリック・シオチィ法案に反対したが287対216で可決している。