2013年11月11日月曜日

仏政府の不法キャンプ撤去政策で 路上に投げ出されたルーマニア移民たち


12日午後からショワジー・ル・ロワ市が同市の体育館に受け入れた。彼らは仏政府によって近くを走るオートルート86号線の橋梁下のバラックの棲家を12日の朝に100人ほどの機動隊に立ち退き追放されて路上に投げ出された。子供たちは礼儀正しく筆者の知っているジタンではない。大人も接してみるとみな盗みや暴力を振る危険な印象付けのあるジタンとはかけ離れた人々であるように感じられた。
 (写真撮影/筆者2010/08/13 ショワジー・ル・ロワ市のフレデェリック・ジョリオ・キュリー中学校体育館で)
サルコジ大統領の政策でフランス政府は、「旅の人々」や「ロム」と呼ばれるルーマニアやブルガリアの東欧諸国からの移民の不法バラック家屋の撤去を宣言した。そのためにフランス中で路頭に迷う人々が急増して社会問題化しつつある。ショワジー・ル・ロワ市に住みついたルーマニアのチュミショハラからやって来た移民たちは100人ほどの機動隊によって12日早朝に高架線の下のバラック住居から追い出された。路上に投げ出された子供や高齢者もいる。ショワジー・ル・ロワ市は見捨てるわけにはいかないとして仮寓を提供し救援にあたっている。公開日時: 2010年8月19日 @ 1:02


パリの南近郊に位置するショワジー・ル・ロワ市の北側をセーヌ川を越えて走る高速86号線があり、その橋梁下にバラックを建てて彼等は住んでいた。ルーマニアから来た「ロム」と呼ばれる家族たちだ。「旅の人々」も同様にキャンピングカーなどでフランス各地を移住するが多くはフランス国籍を持つ者といわれている。
ルーマニアのチュミショハラから家族でフランスにやってきた人たちだ。ルーマニアに戻っても仕事がないという。子供21人。大人が51人で、その内の25人が女性である。高齢者の中には65歳以上の婦人もいる。最少年齢は生後二週間の女の赤ちゃんだ。12日朝早く高速道路86号線橋梁下の棲家を強制退去させられたルーマニアの人々の中に、生まれたばかりの赤ん坊を抱えた母親が野外にいた。12日午後に、ショワジー・ル・ロワ市が体育館にルーマニアの野宿になった人々を受け入れた。この日に赤ちゃんが死亡し母親はこの体育館から救急車でクレテーユ区域間病院に担ぎ込まれたのだと何人かが説明してくれた。(写真撮影/筆者2010/08/13 ショワジー・ル・ロワ市の体育館で
7月末にグルノーブルで打ち出されたサルコジ大統領の移民排除政策の一環で、夏のバカンス中にフランス中にある300箇所ほどのキャンプ住居を排除する指令がなされた。これをブリス・オルトフゥ内務大臣が先頭になって指揮していて、既にこの15日間で40箇所以上のキャンプやスクオット(不法住居占拠 squat)の強制立ち退きがなされた。それは700人を数えることになるという。
多くの人々が住居を失って野宿状態になっている。一方、フランスのサルコジ大統領の人道に反する人種差別の発言行為に対して国連や欧州の人権団体をはじめ国際社会が批判を訴えている。
11日に国連の人種差別廃止委員会(Cerd)メンバーは、サルコジ大統領の最近の「外国人を起源に持つフランス人に対する発言」をあげて、人権国家に於ける「人種差別の顕著な再発だ」として厳しく非難した。それは、サルコジ大統領が7月末にグルノーブルで講演したものをさし、警察などの国権の遂行者に対し危害を加えたり妨害をした場合には、外国人移民の子弟の場合にはフランス人国籍が剥奪されるようにすると宣言していたからだ。また犯罪の主要な責任は外国人にあると発言した。これは共和国の大統領にとって大変な人種差別の重大発言となっているのだとルモンド紙(13日)などでも指摘している。
親達の心配とは別に、かって入ったことの無いであろう広くきれいな学校の体育館で無邪気にはしゃぐ子供たち。(写真撮影/筆者2010/08/13ショワジー・ル・ロワ市で)
市民権に関しては、移民に対するその不平等なクラス付けが意図されているサルコジ大統領の発言となっていることが、問題なわけだ。それはサルコジ大統領の今回の発言自体が、いかなる人も家系やその人種的起源や宗教や性別によって差別があってはならないとするフランス共和国憲法の誓言に違反しているからである。
住居が撤去されたルーマニアの家族をショワジー・ル・ロワ市が受け入れた。同市の体育館で。(写真撮影/筆者)
サルコジ大統領はフランス国籍の取得は移民の名誉であると考えることを希望しているようだ。そして同大統領は自由は安全確保がないとできないとして移民を犯罪の根源とみなしその防止に立ち上がったようだ。しかし自由は平等無しには存在しないわけであるが、この自由とは移民には与えないフランス人だけの自由の事なのだろうか。そういう不平等な市民社会は民主主義ではないだろう。
18日午後からショワジー・ル・ロワ市が住居を壊されて行方に困っていたルーマニア人たちに対して、人道的な立場から「彼等に住居を提供する義務がある」として同市の体育館に受け入れたもの。同市長は共産党でサルコジ大統領の考え方とは正反対だ。
「みんなは何を今日は食べたのか」とわたしが聞くと、ダニエル君は「鶏とハム」だと答えた。赤ちゃんには牛乳が配られたという。
フランス政府に強制撤去を受けバラック住居のなくなったルーマニアの「ロム」の人々に、ショワジー・ル・ロワ市が仮寓の住居として学校の体育館を提供した。(写真撮影/筆者2010/08/13)
ショワジー・ル・ロワ市や多くの人道共済団体のアソシエーションがマットラなどの寝具や食事を援助しているのだと彼等の支援に当っていた市の職員が説明した。
ダニエル君は、「アソシエーションの人が、みんながフランスに居られるように解決策を探してくれるのでは」と期待を述べた。
ダニエル君によると1日に1回食事が運ばれてくることになっているのだといった。