2015年12月14日月曜日

仏地方選挙結果 パリテロと難民の恐怖が 逆に出てペンの極右系国民戦線を阻止

(パリ=飛田正夫2015/12/14 9:10日本標準時)フランスの地方選挙の最終結果が12月13日22時頃に出そろった。ペンの極右派系国民戦線(FN)は0であった。一応は、左派連合が5地方で勝ち、右派は7地方で勝ったと言うことができるが、その数字の内容はというと実に複雑である。そこにフランス人が何を求め何を求めなかったかが現れている。一言でいれば、恐怖であり難民・移民、そしてテロを恐れたのであるといえそうだ。しかしだからと言って外国人嫌いで移民・難民嫌いのペンの極右派系国民戦線(FN)やサルコジ「共和党」(前の国民運動連合UMP)党首が躍進することはなかった。結果が期待とは逆に出たのであった。そこに傍目にはよく理解できないフランス人の求める社会像があるようだ。みんなが仲良く暮らす共和国フランスがあるのだろう。

今回の仏地方選挙の特徴は一律には語れない。しかし130人を殺害したパリ同時テロ射殺事件の丁度1カ月後でもあり、夏のヨーロッパ中を騒がした難民受け入れ問題で保守派は外国人嫌いと外国人に対する恐怖を募らせていた。こういう中で極右派系国民戦線(FN)のマリーヌ・ル・ペン党が第一次投票が示した大躍進があったわけだ。しかしこれは投票率50%も無かった状況下で騒がれたものであった。

決選投票でFNが全然勝てず敗北したのは、社会党(PS)候補が第一回投票で三位ならば、決選投票では降りて、第二位の「共和党」(LC)を支援するように指示を出していたからであった。

しかしこれに反しサルコジの「共和党」(LC)は、イルドフランスやノルマンディーなどの社会党(PS)との決選投票を予想していて、FNからの票を得ようと考えていて、危険な極右派系国民戦線(FN)の躍進の阻止に加わらなかった。結果的に数字の上では「共和党」(LC)は勝ったようであるが数字の中身に大きな疑問が残るのである。

一つは、社会党や左派の指示によって勝った地方が、少なくとも北部地方やプロバンス地方、アルザス地方などが上げられる。二つには、イルドフランス地方やノルマンディー地方では、社会党(PS)と「共和党」(LC)の最終対決になったが、ここでは多くのペンの極右派系国民戦線(FN)の同情票がLCへ流れていることがわかる。それは第三位のFNの決選投票での得票率が少なくなっているからだ。

パリを中心にしたイルドフランス地方では、バレリー・ペックレス「共和党」(LC)候補にFNの票が流れたと見られる。この極右派系国民戦線(FN)に対抗して闘っている社会党(PS)のクロード・バルトローンヌ衆院員議長には、第一次投票で第三位だったFNの票が第二次決選投票で流れ込むわけがない。サルコジはこのペンの極右派系国民戦線FNの票の流れ込むことを第二次投票で期待して読んでいたと言える。

フランス北部では、元労働大臣のクザビエ・ベルトラン「共和党」(LC)候補が当選したのは、社会党(PS)が第二次決選投票を降りて、ベルトラン氏を応援したためで、その社会党などの左派票によって自分が当選したのであり、このことを忘れないとインタビューでベルトラン氏は話している。

これをLC党の№2の重鎮ナタリー・コシウスコ・モリゼ(NKM)は、夜のテレビに出演し、地方の人々の支持があったのだというニュアンスで言い換えている。NKMはサルコジが以前に使った作戦「ni-ni」を持ち出した時に、そのようなどっちつかずのやり方ではフランスをFNから救う闘いにはならないとサルコジの不明瞭さを批判していた。結果的にNKMは自分の発言が正しかったとし、そのサルコジ批判の発言を把持すると、言っている。

第一次投票でトップになったFNからは、票を期待できないクリスチャン・エストロジ「共和党」(LC)候補が、南仏での第二次投票でトップになったのは、社会党(PS)が第一回投票で第三位であったので、PSの指示に従って決選投票を降りて、第二位のエストロジ「共和党」(LC)候補を応援したためであった。ところがサルコジの友人で前法務大臣のダチが夜のテレビに出てきて、「共和党」(LC)は明確に数字で勝っている我々は勝ったのだと発言していた。しかしこれは数字の中身を理解しない人の話しなのである。今回の選挙では、自分が1人で勝った勝ったと言う人はいないのである。

アルザス地方は、社会党(PS)が第三位であったが、党の指示に従わないこの地方の候補社は、決選投票でも立候補したのだが、選挙民は党の指示に従って「共和党」(LC)に投票して入れ、国民戦線(FN)のトップ防衛を果たしている。

社会党(PS)やヨーロッパ・エコロジー・緑の党(EELV)や共産党(PC)、左派連合などと連帯することでペンの極右派系国民戦線FNを阻止した。

社会党(PS)など左派の連合のFN防衛支援によって、「共和党」(LC)候補を決選投票でトップ当選を実現させた地域が3つはあるからだ。

また、ノルマンディーとイルドフランスでは、左派と右派が僅差で最後まで接戦になった。この二地方では、FNの票がサルコジの「共和党」(LC)へ流れた。それはLCのサルコジが主張しているようにFNを嫌ってなくて、サルコジはむしろ好意的にみていた。むしろサルコジは社会党(PS)や左派との連帯でを避けていて、極右派系国民戦線(FN)のマリーヌ・ル・ペンの票を第二次決選投票で期待していたからである。

こういうサルコジの政治的なFNを利用した駆け引きを可能にしているのは、トゥールーズ・モントーバン連続殺人のメラ事件などを観察するとわかるが、人心を弄ぶ昔からの共和党(前の国民運動連合UMP)の伝統であったようだ。しかし今回はフランス人はこれをもっと恐ろしいものだと理解したのようで、サルコジのフランス人と移民を分断化する恐怖もペンの外国人排斥主義の恐怖も受け入れなかった。サルコジ氏のかっての作戦「ni-ni」は効果がなかった。フランス人はFNでもなく、LCでもない選択をしたのである。パリ同時テロ射殺事件で得たフランスが得た教訓は、このみんなが仲良く一緒に暮らす共和国の価値の見直しであったようだ。

フランス人はテロ襲撃事件や移民への人種差別の恐怖に打ち勝っていこうという戦いが皮肉にも北部地方とプロヴァンス地方で起こった。人種差別の強いプロヴァンス地方の議員でニース市長クリスチャン・エストロジ「共和党」(LC)候補が地中海を渡ってフランスに入ってくる難民の玄関口で、左派の協力を得てFNに勝ったという事である。また、、北の英国へ渡るドーバー海峡のカレーの移民キャンプは北部の難民受け入れ嫌いを象徴してペン候補(FN)が跳躍している地方であり、そこでも社会党(PS)や左派連合が自党の当選を回避して、「共和党」(LC)を支援しFN防衛に成功したのである。

【参考記事】
http://www.20minutes.fr/elections/1750223-20151213-elections-regionales-droite-gauche-partagent-france-fn-obtient-aucune-region
http://tempsreel.nouvelobs.com/politique/elections-regionales-2015/20151201.OBS0524/elections-regionales-2015-tous-les-resultats-premier-tour-deuxieme-tour-dans-votre-region-lr-fn-ps.html
http://www.lemonde.fr/nord-pas-de-calais-picardie/elections/

http://www.leparisien.fr/elections-regionales/resultat-des-regionales-la-droite-devant-le-fn-sans-aucune-region-13-12-2015-5367481.php
http://www.lepoint.fr/regionales-2015/elections-regionales-les-resultats-du-second-tour-en-direct-13-12-2015-1989664_2592.php

http://www.franceinfo.fr/actu/politique/article/sept-region-droite-cinq-gauche-aucune-pour-le-fn-751705

http://www.franceinfo.fr/actu/politique/article/suivez-le-second-tour-des-elections-regionales-751577
Elections régionales : sept régions pour la droite, cinq pour la gauche aucune pour le FN