スタイナーは、「青鬚の城にてー文化の再定義への覚書」ジョージ・スタイナー著 桂田重利訳 みすず書房 1972年を読んだ。この書の中でスタイナーは、キリスト教徒が抱いた、ユダヤ人への憎悪と敵意の復讐の怨念がユダヤ民族撲滅の大量虐殺や強制収容所を作り出したと分析している。スタイナーの論考はテーマへの素晴らしい切り口をみせている。つまり、同氏によればユダヤ人大虐殺のファシズムの台頭は、経済的な問題などではなくて宗教的な心理分析がなされなければならないとして、キリスト教の性格が問題にされた。ユダヤ一神教の横暴な神に苛まれて、それを仇み恨んでいた西欧のキリスト教徒たちは、その圧力感の不満から神を創ったユダヤ人に復讐したいという反射作用が爆発したのが、アウシュヴィッツでありトレーブリンカ強制収容所だという。宗教の救済倫理が世界の運命を規定したという素晴らしい切り口だ。