フランスとイタリアは欧州議会(EU)に国境でのアラブ世界からの移民の一時的な検査ができるようにシュンゲン協定の見直しを要求している。それはアラブ世界の革命やカダフィ大佐への軍事攻撃でチュニジアやリビアの避難民が続出し彼等は地中海を渡ってイタリアやフランスへと奔流しているためだ。特にフランスがチュニジア移民を乗せた列車をイタリアとの国境でストップさせて入れなかったことで、またフランス国内へ入った移民を警察が逮捕して送り返してきた。このことで欧州域内の自由な往来を歌った欧州の基本理念の柱の一つであるシュンゲン協定が地割れを起こしている。イタリアやフランスはこれを見直すことを主張していて欧州議会の大問題になっている。
5月10日、ジョゼ・マヌエル・バローゾ欧州委員会委員長は、欧州が地中海の対岸から押し寄せる移民にたいし秩序だった具体的な回答ができないとしながらも、欧州は新しいバイアスのメカニズムによって、しかしポピュリストや極右や外国人嫌い誘惑に左右されずにシュンゲン協定を強化してゆく方針を説明した。このメカニズムとはすでに発表されているシュンゲン協定の一時停止のことであるという。
欧州委員会の副議長で安全政策と外相担当の欧州高等審議員のカトリーヌ・アシュトンさんは5月11日の「欧州議会(EU)の外交について」と題する討論会に参加したが、欧州議員からは、「欧州議会は特に外交では、イタリアの移民問題を援助していない」「フランスのシュンゲン協定違反となる移民入国の妨けを見過ごしている」[移民に手を差し延べる主導権を採るべきだ」などと批判されている。また欧州議員たちは、リビアやチュニジアの難民管理と共にリビアやシリアの専制体制で抑圧され苦しんでいる人々への具体的な援助政策もまた必要だと主張している。
5月11日の欧州議会(EU)でもって、欧州人民党(PPE)議長でフランス現政権与党の国民運動連合(UMP)のジョセフ・ダウル議員は、4月初めに北アフリカからの違法移民の奔流に対しフランスのサルコジ大統領とイタリアのベルルスコーニ首相が欧州議会(EU)に対しシュンゲン協定の国境での一時停止を要請していたとして厳しく批判し議場からは大きな拍手がわいたとロイター通信を引いて「ル・ポワン誌fr.」は報道した。
同氏は「死を賭して不備な状況で海を渡ってくる移民に対し我々の国はしばしば分離し争わせてきた」と話し「国境の閉鎖はシュンゲン協定の思想に違背するものだ」として、それは全く欧州の尊厳と価値と思想を損なうものだと批判した。同党では10日にシュンゲン協定の改正を拒否している。
フランスとイタリアの動きに同調したデンマークは独自に6月から国境での移民検査を始めると発表している。移民対策強化はフランスと同様に選挙が近いせいだと見られている
17日からはバローゾ委員長はチュニジア訪問を予定していてそこで欧州への移民抑止を説得する予定だ。
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