2011年3月11日金曜日

【コラム】 戦争は指導者が愚昧だと簡単に始まる、サルコジとカダフィの思想的貧困さが解決できない原因


前にも書いたようにフランスが世界中でフランスの誇るラファール戦闘機を一番多く売ってきた相手国はリビアの独裁者カダフィのところである。このリビアのカダフィ大佐を2007年晩秋に国賓としてフランスに招待したのはサルコジ大統領であった。以後両者は友人関係にあったはずで軍事や経済面でプラント契約がなされてきた。独裁者と手を組んで利益を得てきたわけだから、ここにきていまさらカダフィだけを悪者にして自分はいい子でいられるわけがない。
パリに国賓招待をうけた独裁者カダフィ。握手する友好国フランスのサルコジ大統領。写真はユマニテ紙の2011年2月23日号で「汚れた手」とタイトルが一面トップで出た。 

問題はこの悪がいかにして戦争をせずに解決の方向へ向かって人権と人間的な尊厳を失わずに転換してゆけるかである。自からの怒りの生命の呪縛を解き放つことのできないこれまでのカダフィやサルコジの思想的欠陥性からは戦争を回避しての問題の解決は両者ともにかなり困難であるように思われる。

このままでいくと目前の結果は見えていて、不幸な両国の戦争ということになる可能性のほうが強いだろう。愚かな誤った思想を持つ指導者に鼻先を引っ張られていく国民はさらに悲惨ではあるがそれもその国の市民がこれを許してきた責任である。

「兵奴の果報」ということがいわれるが、これは奴(やっこ)となって戦争へ狩り出される因果というものが作られていくのだが、これはこの人を殺し戦争を許す愚昧な思想が原因して起こってくるということだ。



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EU欧州臨時首脳会議、「リビアのカダフィ空爆」には反対、独の心配は仏サルコジ大統領の軍事介入での紛争激化



空爆を加えるためか?フランスはベンガジ方面の領空権を封鎖しようと国連に訴え始めている。ドイツのメルケル首相は空爆をすれば北アフリカでの本格的な戦争が起こってしまうと恐れてサルコジ大統領の空爆には反対した。27カ国欧州臨時首脳会議では多くの国が反対した。紛争や災害の機会には大国はしばしば石油などの利権を狙って分裂や支配などのコントロールをもくろむから注意が必要だと、ボリビアのエボ・モラレス大統領の話しが気になる。

3月11日ブリュクセル(ベルギー)でリビア問題で27カ国欧州臨時首脳会議が開催された。各国欧州首脳は慎重で、リビアのカダフィに空爆を主張するフランスのサルコジ大統領の軍事介入は予想できない軍事紛争を巻き起こすと心配し多くの国が反対した。サルコジ大統領は孤立した。ドイツのメルケル首相は北アフリカの本当の戦争になるし住民を脅かし人権を守れないと主張して反対した。フランス国営放送・テレビA2では普通より30分も延長して日本の地震ニュース特集を放映したが、このニュースは最後の頃に数秒だけ短く伝えた。

ヌーベル・オブセルバトワー誌frなどによると、ベンガジ蜂起住民などでつくる「反リビア政府臨時国家審議会」をリビアの正当な代表として承認宣言したサルコジ大統領の発言は、今回の欧州臨時首脳会議では公式には承認されなかった。それはONU国連で決めるべきだとする意見が大勢であった。

この問題に関し、カイロで欧州議会(EU)とアフリカ諸国連合(UA)とアラブ諸国連盟(Ligue arabe)の三者会談を開催すべきだとしたが、アフリカ諸国連合(UA)は10日、リビアへの総ての軍事介入をきっぱりと拒否すると発言していた。

同首脳会議で発言したサルコジ大統領は、空爆行為は標的を定めたもので英国とフランスの可能性としての主張であることを鮮明化させている。しかもカダフィが化学兵器を使用した場合や平和的な抗議デモにたいして戦闘機による爆撃を加えた場合であると限定化した。

27カ国欧州臨時首脳会議でのサルコジ大統領の発言では、このリビアのカダフィへの「空爆」とは、蜂起側の「反リビア政府臨時国家審議会」を国連(ONU)とアラブ諸国連盟(Ligue arabe)とがリビアの代表政権だと承認するようになった上での話しだという。さらに「標的を定めた空爆は純粋に防衛的なもの」として行われる性質のものだとしている。

しかしほとんど全部の欧州首脳はこのサルコジ大統領の意見が最終的に想像できない恐ろしい軍事戦争を巻き起こす危険な方策だとして躊躇して賛成しなかった。

イタリアのフランコ・フラチニ外交官はリビアの空爆に参加しないときっぱりと明言した。サルコジ大統領のこのような「演劇がかった」発言は、しばしば強国が使用してきた紛争の利用であって産油国をコントロールしたいに過ぎないのだとの批判がボリビアの エボ・モラレス (Evo Morales)大統領からでているという。

「反リビア政府臨時国家審議会」に関しては、リビア東部のベンガジなどの現地でフランスが蜂起民にてこ入れしてつくらせたと、カダフィ大佐の息子セイフ・アル-イスラム氏からはその内政干渉が批判されている。

北大西洋条約軍事機構(NATO)の総長は不測の事態に備えるために見ていこうといっている。しかしその条件として、必要性の証明、法的な権限委任が現地で明解にかつ支持されているか?といったことが満たされていることを上げている。

フランスのサルコジ大統領はリビアのカダフィ大佐を叩こうとしているが、独裁者のカダフィにこれまでに戦車やラファール戦闘機など重装備の軍事武器を輸出してきている。リビアのカダフィが2週間前から急に独裁者になったので、2007年にフランスの国賓として招待された時点でのカダフィとは独裁者ではなくてサルコジ大統領の信頼できる善友であったという前提認識があるわけだ。そうでなければ「キチガイに刃物」を目をつぶって売ってきた独裁者支援の犯罪人になりかねないからだ。

ミッシェル・アイオマリ外務大臣(前内相、元防衛相、MAM)の同伴者のオリエ国会連絡相が長年に渡りカダフィと一緒に20回ほども旅行して付き合ってきた背景には、同氏が証言しているようにカダフィの最近での急激な逸脱が問題だという認識がある。つまりフランス側ではなくてカダフィが独裁者へ変貌したのだとする認識である。

同様に、チュニジアの24年間に渡る独裁者ジン・アビディン・ベンアリ大統領の国外逃亡の失脚で、2月中旬にサルコジ大統領から任命されたボリス・ボワロン新チュニジア・フランス大使は2月19日に、チュニスで記者会見し、その横暴な発言でチュニジアの国民から辞任を迫られて、ついにテレビで謝罪した。このボリス・ボワロン氏は新しいタイプの小サルコジだと呼ばれる外交官で、2010年11月のフランス・テレビ出演では、自分はカダフィの子供だといわれたと自慢し、いつまでもカダフィを過去の独裁者のイメージで扱っていてはかわいそうだと発言していたことが最近に暴露されている。

これらの証言は、フランス外交のリビアのカダフィへの認識として興味深いものである。つまりフランス政府は、カダフィを経済のパートナーとはするが、独裁者とは認めたくなかったということがわかるからだ。

ところがいまフランスのサルコジ大統領がカダフィを空爆しようとしている。それはなぜなのか?その回答としては、2012年の大統領選挙へ向けてのイメージとしては、「アラブ諸国の春」にあまりにも醜悪で残忍な抑圧をかけてきた独裁者たちのリストの一人であるカダフィと肩を並べて赤い絨毯を歩いたサルコジ大統領の握手姿を拭い去るためだという意見が多い。

フランスは以前から付き合ってきた危険なカダフィに軍備増強を援助協力してきたのであって、いまになって同氏を独裁者扱いするサルコジ大統領の思想的な一貫性の欠如が疑問視されてきている。

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