2011年5月23日月曜日

コートジボワールの「平和と民主主義」の代価に 戦争殺害三千人 「サルコありがとう」とワタラ

欧州からのコートジボワールのワタラ大統領就任式の儀式(5月21日)に参加したのは欧州からはサルコジ仏大統領一人だけであった。ワタラへの国際社会の支持云々と報道されてきたが、その中身はなんだったのか?空爆がおこなわれコートジボワール共和国軍(FRCI)を支援したフランス特殊部隊(Licorneリコルヌ)が活躍し、ロラン・バグボ前大統領との闘いで3000人が死亡した。国連(ONU)の介入も疑問なところが多いが、ワタラ新大統領はサルコジ大統領を前にして「みんながサルコありがとうといっているのを見ましたか」と儀式で話している。

コートジボワールの平和と民主主義のためには余りにも大きな代価が払われた。この国際社会の軍隊介入という解決策がはたして正しかったのか疑わしい。

4月11日バグボ前大統領を逮捕したのはフランス特殊部隊(Licorneリコルヌ)の力によるところが大きい。このリコルヌ部隊は一般の国連軍(ONUCI)ではない装備も機能も全く別な戦闘部隊であるが、これを国連の潘基文事務総長がフランスに出動を要請したことになっていて、潘基文もこのワタラの儀式にはアフリカの20カ国の首脳と共に参列している。

ワタラは「平和なくしてどんな発展もかなわない」と宣言したが、コートジボワールの市民3000人の犠牲は発展に必要だったのかは問うことをしなかった。この首脳陣たちのいう平和とはなんなのか?3000人の犠牲者への追悼はなかったのか?この死を恐れ悼まないわけにはいかないだろう。

フランスは仏軍隊を在留仏人の安全のために今後も駐留させると宣言している。これが今後コートジボワールの平和な発展を保障するとは思えない。

ワタラは「危機は民主主義の勝利で終わった」とも言っている。しかし民主主義の勝利に3000人もの死者をだしておいて、はたして「コートジボワールの、全アフリカの成功だ」などといってアフリカ全部の共同の結果であるかのようにいっているのは危険ではないか。

おそろしい民主主義がアフリカにはあるものだ。これを国際社会や国連の潘基文やサルコジが認めているのだから凄いことになった。ワタラは自分の大統領就任の儀式で「コートジボワールとフランスとの歴史的な結びつきと未来への共同のビジョンを称賛」した。これはフランスとアフリカの旧植民地の再来を宣言したようなものでまったく驚かされるのである。

フランスや国連のコートジボワールへの軍事介入は大統領選挙の結果発表の初めから偏(かたよ)ったものがあったと指摘されている。ワタラの選挙指揮本部であったゴルフ・ホテルまで国連の職員がやってきてワタラを大統領選挙の勝利者だと発表した経緯があった。コートジボワール司法権の最高決定機関である憲法審議会のポウル・ヤオンドレ議長は大統領選挙の結果発表が遅れていたためにバグボの当選を認める宣言をした。このことで二人の大統領が互いに争うことになった。両者の争いには部族的な背景があり、これにフランスや国連軍(ONUCI)などが国際軍事介入した。市民戦争が拡大し3000人も死者がでた。

3000人がどのようにして殺害されたのか大量虐殺の疑いはないのか?バグボ側だけでなくワタラ側やひろく殺害戦争に参加したフランスを初めとする諸外国の軍隊や国連軍(ONUCI)の調査も平等になされる必要があるであろう。

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(参考記事)
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