2011年11月19日土曜日

アラン・ジュッペ仏外相(前防衛相)のシリア戦局発言に見る、仏外交の謎

フランスのアラン・ジュッペ外相(前防衛相)は、「シリア介入は遅すぎた」「国連安保理が動かないのは受け入れがたいことだ」として、「フランスは常に国連安保理の基に動いてきた。例えばリビアでもそうだった」「これはフランスの常に変わらぬ立場である」と語っているのが18日の仏国営ラジオ・フランス・アンフォで報道された。しかし正確にいうとシリアとリビアとではその事実関係は異なっているのではないか。世界の紛糾しつつある地域に必ずといってよいほど仏軍が顔をだす本当の理由は何なのだろうか?それとも逆に、フランスが世界の紛争を作り出しているとしたらこれは大変なことだが疑問は残る。

シリアへの国際社会の介入は国連もフランスも遅かった。リビアの場合にはフランスが先ずカダフィ大佐を空爆することを考えだし、交渉で英や欧米諸国を動かし国連決議1973を通し空爆に正当性をもたせた形をつくったともいえる。この空爆には人道の観点から中国やロシアが反対している。

この意味ではコートジボワールにおける2011年4月4日のロラン・バグボ前大統の宮殿を空爆して国連軍(ONUCI)を支援しバグボを逮捕した時も、フランスの特殊部隊(Licorneリコルヌ)による爆撃がなされたが、この出動は国連の潘基文事務総長からの要請によるものだといっている。

リビアのカダフィ大佐が殺害される直前のフランス空軍のミラージュ戦闘機による空爆もまた、北大西洋条約機構軍(NATO)の要請に従ったものだとしていて、フランスは直接の指揮権はなかったことを主張しているようだ。

直接的には表に立たないで、しかも強力な軍隊を出動させることに関心のある戦略的なフランスの立場というものが、今回のジュッペ外相の発言から感じられるのである。