2011年11月30日水曜日

ニューヨーク・ソフィテル陰謀説、ストロスカーンの隣の部屋の泊まり客は?

フランス・アコー系列のニューヨークのソフィテル・ホテルに国際通貨基金(IMF)前専務理事ドミニク・ストロスカーン(DSK)氏が宿泊していたその部屋は2806号室であった。先週末に米のジャーナリストのエプステェイン(Edward Jay Epstein)記者が « New York Review of Books »で、DSK事件陰謀説を打ち上げてそれが沸騰している。DSKの隣の部屋2820号室には誰が泊まっていたのかが大問題になっている。それは、DSKから性的暴力を受けたと主張したホテル・メイドのナフィサトー・ディアロさんが5月14日の事件の直前直後に何度もその部屋に行き来していることがわかったからである。
エプステェイン記者は、DSKの携帯電話が盗聴されていたことを指摘している。ニューヨークからパリへ向かう直前に、DSKは与党政権の国民運動連合(UMP)で働く友人から連絡を受けていて、そこでは、DSK婦人のアンヌ・サンクレールさんへの通信がサルコジ大統領側の数人に傍受されていることを伝えていた。DSKはパリに帰ったら専門家に調べてもらうつもりだったという。

28日、フランスの左派系リベラション紙fr.は調査源に近い筋からの情報だとして、ニューヨークのソフィテル・ホテル2820号室に泊まっていたのは、(証言者は匿名を希望しながら調査員に話した)仏人実業家であるといっている。しかも数日間の休暇でニューヨークに来ていたのだと語っているという。また、ホテルの電子機器担当責任者の尋問ではナフィサトー・ディアロさんがDSKの部屋に現れる前に3回ほど2820号室を訪れていることを証言している。

警察側の尋問でナフィサトー・ディアロさんが答えたのは、清掃のために10時30分に2820号室を開けたが、客は部屋にいて、2回目に11時にもう一度行った。ちょうど客は出かけるところであった。それで11時30分に部屋を清掃できたという。

そして、ディアロさんが次に、2820号室の扉を開けているのは12時26分で、それは、DSKへの性的暴力がなされた後になる。ところが、ディアロさんは当初の警察への証言では事件後に廊下に隠れていたといっていた。何かを彼女は省略して証言していたことになる。ソフィテル・ホテル側では2820号室の客はホテルを11時36分に出ているという。

エプステェイン記者は、ニューヨークのソフィテル・ホテルで事件直後の監視ビデオにはナフィサトー・ディアロさんの話しを聞いて雀躍歓喜して「勝利のダンス」をしている従業員が写っているという。何らかの陰謀実現の祝福の表現として指摘できると見ている。

ビデオに写っている同ホテルのサービス・テクニックの責任者(Brian Yearwood)ともう一人の未知の人物がディアロさんの話しを聞いて喜んでダンスをしている。この情景はDSK事件直後のものであり、この様子が問題になっている。この未知の人物がディアロさんを伴って、サービス・テクニック責任者のところにやってきていたわけだ。

28日、パリマッチ誌.fr.ではホテル側ではダンスは3分間ではなくて「8秒間」であった。「喜びのダンスではない」といっている。同誌でも、エプステェイン記者はもしこのビデオを取得することができて条件が許されるならば、自分で公開するといっていた。

ディアロさんがインタビューを受けた後でも、ソフィテル・ホテルの警備員の2人が彼女を祝福していたという。この2人はフランス国営放送テレビA2(27日夜)では、スポーツ競技で勝利して祝福しているのだと解説し時間も8秒間であったとしていた。

今後は、DSKの隣室2820を使用していたフランス人の身元の割り出しと、現在は裁判所が保管しているホテルの監視ビデオの解明が待たれる。


7月21日にラジオ・フランス・アンフォによると、アコー社系列のニューヨーク・ソフィテル・ホテルの管理所長であるグザビエ・グラッフ(Xavier Graff)氏が、パリのアコー社のお客の健康と環境破壊取り締りセンター(OCLAESP)所長チェリー・ブーレ(Thierry Bourret)氏宛てにメールで「ニューヨークのソフィテル・ホテルで、われわれはDSKを失墜させることに成功した」と書いているメールが暴露されている。

つづけて同氏は「われわれは、パリのアコー社のお客の健康と環境破壊取り締りセンター(OCLAESPOCLAESPが今夏、誤魔化しをするサイクリスト(自転車競技者)らを取り押さえることに成功することを希望する」と有名な自転車競技トゥール・ド・フランスについてのブーレ氏の発言に対しコメントをメールで書いて連絡していたことが、ラジオ・フランス・アンフォで暴露されている。

DSK支持の市民グループでは、この暴露を「国家事件の可能性」の問題として指摘している。ソフィテル・ホテルの所有者アコー・グループと仏大統領官邸エリゼ宮殿、内務大臣クロード・ゲアン氏の庇護下の警察幹部との関係で、明確な説明を大統領に書面で要求した。

ニューヨークのソフィテル・ホテルで事件がおきてから、ニューヨーク警察に連絡されDSKが飛行場で逮捕された。が、警察への連絡までには1時間もの時間がかかっていることに疑問がもたれていた。

そのためにホテル側が警察より前に、フランス側への連絡がなされ、なんらかの指示が出ていたのではないかと見られているわけだ。そこからDSK支持の市民グループらのいう国家関与の疑惑が存在することになる。

アコー・グループを介して3月14日から15日にかけていち早く仏大統領官邸への報告があったことはゲアン内務大臣が7月13日になってからジャーナリストに問いただされて初めて連絡があったことを認めている。

ホテル側がフランス政府に連絡するのは重要な人物なので当然だと内務大臣はいった。しかしその重要な人物の事件の連絡の事実はこれまでフランス政府は発表してこなかった。グラッフ氏はこれらの動きに常に関与していた人物だと考えられている。

グラッフ氏によって送られたメールに関しては、本人は「冗談だ」といっている。しかし、パリジィアン紙では同氏の職責からみて重大な発言であり、冗談ではすまないだろうと見ている。

メールを受け取った元陸軍大佐であったOCLAESP所長のチェリー・ブーレ氏は、「これはひどく悪い冗談で、痛ましいことだ」とパリジィアンのジャーナリストに話しているという。

またこのメールは18人ほどに宛てて送られていて、その中にはアルザス地方の上院議員、警察署長、判事、弁護士組合員、教師、陸軍士官などがいる。多くは内務省で働く人々であったとフランス・アンフォはいっている。