欧州での外国人嫌いや人種差別的移民迫害がテロ襲撃事件とも関係して拡大化している現在、欧州共同体設立の基本理念を希薄化させる二つの方向が仏国内では起こっている。一つはマリーヌ・ル・ペンの極右派系国民戦線(FN)や左派党共同議長のジャン・リュック・メランションなどの欧州離脱派と、もう一つはサルコジのような欧州共同体の拡大解釈で英国なども参加できる別の経済協力的な価値付けを欧州共同体で新規定し直そうとするものだ。
欧州共同体の設立理念という処には、米国や英国と異なる欧州の人権思想の価値付けが存在しているわけで、フランスなどはここは譲れないわけです。ところがこの理念を英国の様な異なる価値判断でつまり人権ではなくて、経済や雇用、企業的利益を優先的に考えてしまうと、今回のような離脱が当然になるのだという事である。
経済利益を先にした欧州共同体というのは、基本理念と逆さまに成る可能性が高くなるわけだ。平和も経済もという両方を並べることが危険なのであr。経済利益で必ず分裂し離脱して争い戦争になるわけだ。大陸のヨーロッパはもう一度、この点を明快に再確認し合って、反戦平和のヨーロッパ共同体建設に向かって行くと考えられる。
欧州共同体国境の直ぐ近くまで戦争がやって来ているわけで、いつ争いが起こるかわからないからだ。
ビュロクラシーの欧州議会を指摘する人もいるが、6月23日(木)の国民投票で英国の欧州離脱に賛成した人は50歳以上の高齢者たちで、これから将来に生きる青年たちはといえば、欧州残留に投票したといわれている。世代別間の分断化がここにある。英国の北部アイルランドなどでは圧倒的に欧州残留派が多かった。ここでは英国からの分裂・独立の機運が高まっていて、英国はフランスではグランド・ブルターニュと呼ぶが、これが小さな国になってプチット・ブルターニュになるのだと言われている。
国民投票は民主主義的に問題を解決する手段のように思われているが、実際には、その逆で目先の経済的なエゴしか考えないポピュリズムの人々に迎合する大衆紙が煽って流す情報に浮足がさらわれがちなのである。(文字数 ;1339)