2013年10月20日日曜日

国権を超える人権を認める仏共和国 仏移民排斥でレオナルダさん家族論議

 仏政府によってコソボへと排斥されたレオナルダ・ディブラニさん(15歳)に関し19日夜にオランド仏大統領は、「もし彼女が希望するならば」レオナルダさんだけの「フランス帰還を許可」するとエリゼ大統領官邸からのテレビ放映で話した。就学中の生徒を移民であっても逮捕することはフランスではできないとフランス共和国の価値を確認したが、フランスの法律に準拠し彼女の家族を移民として受け入れることは拒絶した形ちとなっている。そのために社会党書記長など同党左派からは家族も一緒にフランスに受け入れるべきだとの意見も出ている。ここに、移民の人権もフランス人同様に認めるべきで人種差別をしないという仏共和国の悩みがある。

 レオナルダさんの父親(47歳)は、「子供だけをフランスにやることはできない。たとえ仏刑務所に繋がれても自分たち家族も一緒に絶対にどんな違法の方法を取ってでもフランスに戻るのだと主張している。バルツ仏内相はロマ人を自分たちと生活・習慣が余りにもかけ離れているとして同化の不可能性を強調して問題になったばかりであった。
  
 この問題は、大統領以上に人気のあるマニュエル・バルツ内相が移民取締り強化の一環で起こった。警察が、社会見学のバスに乗車していたレオナルダさんを逮捕し家族共々コソボへと送還したことがサルコジ流の移民排斥にも似て共和国の精神に反するものだとして批判された。そこに保守系のフランス人が喜ぶバルツ内相の右傾化を批判する意味が微妙に隠されているとも考えられる。

 レオナルダさん逮捕執行の責任者を辞任させるべきだとの意見が続出しているが、2009年にサルコジ政権中にエリック・ベッソン移民相(ministère de l’immigration, de l’intégration et de l’identité nationale)によって任命された知事ステファン・フラタッチ氏らにも嫌疑がかかっている。

 オランド大統領は生徒の就学中・登校中・課外活動などにおいても教育の現場で逮捕があってはならないと強調することでサルコジ氏との違いを強調づけたのだとも考えられる。

 この問題でレオナルドさんを支持する高校生や大学生のデモが繰り広げられてきていて、アルメニア人排斥反対団体やバルツ氏のやり方に反対する社会党議員などを糾合して、週末にはパリのバスチィーユ広場を初めフランス各地で大きな抗議集会となっていた。このことで、 左派党(PG)のメランション氏はバルツ氏の辞任を要求している。フィヨン前首相はオランダ大統領の決断が不明であると批判している。右派系(サントラル)のジャンルイ・バルロー(前環境相)などは、オランド氏はフランス法の遵守と家庭の尊厳がどうなっているのか理解できないと語った。

 しかしフランス人一般はこのレオナルダさんの家族の主張に対しては冷静に見ていて、75%以上がフランス帰還には賛成ではないとしている。その理由は、レオナルダさんが真面目に学校に行っていなかったこと。父親だけがコソボ生まれだが子供たち3人はイタリアで生まれであった。しかしフランスに住む為に一番若い子供はフランス生まれだと嘘をついていた。父親は乱暴で妻や子供を殴ったりしていたことがあげられる。


【参考記事】

Hollande à Leonarda: «Ta famille, tu l'aimes ou tu la quittes»

 |  PAR CARINE FOUTEAU