2011年3月21日月曜日

【コラム】 アラブ連盟が欧米連盟の「リビア戦争」を批判 空爆・軍事行動が国連締結に違反と

3月20日、リビアへの空爆軍事介入でアラブ連盟が欧米連盟による攻撃を批判した。国連安全保障理事会での締結と目的を逸脱した過度な爆撃で領空制限の決定も守られてなく、他の町が爆撃されて市民の安全が保障されなくなっていると抗議したもの。

国連安全保障理事会では「リビア空爆」を先導するサルコジ仏大統領は国連(ONU)投票でアラブ諸国からの支持が欲しかった。それはフランスが早急にカダフィを封じ込めなければならない理由があって、「国際社会の承認」として空爆を名乗るためには、欧米諸国だけでなくアラブ諸国の名前が必要だった。アフリカ諸国連合(UA)は早くからこれを見抜いて拒否していた。中国やロシア、ドイツはこのリビア戦争の拡大化を恐れ、当初より態度を硬化させている。


空爆はリビア東部のベンガジよりも先に西部から始まっている。フランスのアラン・ジュッペ外相は国連安全保障理事会の投票前に演説し、アラブ連盟諸国の支持を得られることが、欧米だけがリビアのムアマル・カダフィの空爆を主張してないとする有力な理由とするために必要だと発言している。

すでにカイロでの欧州(EU)とアラブ連盟とアフリカ諸国連合(UA)の三者会談が決裂していたのは、UAがこのカダフィ制裁に、外国が軍事介入することを初めから拒否していたからだ。しかしこの事実をフランスのラジオ・テレビでは余り広く報道しなかった。少数のアラブ国の支持を取り付けたがアラブ連盟全体の合意であるかのような印象を与える報道発言がなされていた。

その辺の先を急いだサルコジ大統領が主導したカダフィ大佐への空爆が今また問題になっている。したがって国連安保理決議ではリビアへの空爆は、オバマ米大統領が強調するように米国は陸上戦は参加しないといってきた。しかし今(21日)は、国連安保理の決議でこの陸上戦は行わないことが決まっていたと報道されだしている。

20日深夜のフランステレビ(TV3)のニュースで、アナウンサーは「アンリ・レヴィが、リビアへの爆撃に深く関係したのはご存知でしょう」と短く話し、「アンリ・レヴィがこの戦争は正しい戦争だ。サルコジ大統領は勇気があった」と発言したと伝えた。

この哲学者だというベルナール・アンリ・レヴィというのは今回のリビアのカダフィへの爆撃をニコラ・サルコジと二人だけで企画したらしいと政治風刺・暴露の専門新聞カナール・アンシュネがいっている人物だ。同氏は2007年の大統領選挙ではサルコジを支持している。以後、しばしば鞭打ちのサキネ問題などでもサルコジを支持して発言してきた。


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リビア空爆は国連安保理「決議枠逸脱」怖れ NATO指揮下へ

中国・ロシアは欧米を批判

国連安全保障理事会の決議1973によってリビア空爆の軍事的行使制限に即して欧米連合軍がカダフィ側への空爆を展開しているとして、国連の潘基文事務総長はロシアに連合軍支持の勧めをしたが、いまもなおメドベージェフ大統領は、中国の立場と同じく、リビアの市民が連合軍の無差別空爆で犠牲になっていることを嘆いて拒絶している。カダフィ軍と蜂起側の反リビア政府臨時国家審議会側とが重なりあっていて両者の判別が困難になっているために、空爆は市民を保護する国連決議に抵触する恐れがでてきていて、戦争責任の支点を移動させようとする仏米の政治的な判断が臭う。

北大西洋条約軍事機構(NATO)では28カ国のメンバーによりカダフィへの武器輸出禁止の新たな作戦展開を決めると発表した。過激になって度を越してきたリビア戦争を提案し開始させたのはサルコジ大統領だが、フランスはNATO決議で攻撃に限界が出てくることを予想している。が、戦争の主導責任がNATOへ移ることを22日に譲歩したと「リベラシオン紙fr.」は伝えている。

カナダ軍は22日、飛行場施設への爆撃を諦めたと伝えた。理由は市民への爆撃の恐れがあるからだという。

23日、欧米連合国側のリビアのカダフィ大佐への攻撃は4日目を向かえた。20日、連合軍側がミサイル攻撃をしたトリポリのバブ・エル・アジジヤの私邸から、22日にカダフィ大佐は公衆の前に姿をだしたとリビア国営テレビは報道している。

リビア政府側からは、連合軍は19日からの空爆でトリポリ、ゾォアラ、ミスラタ、シィルタなどで市民に数多くの犠牲をだしたといっている。また21日は連合軍は南部のカダフィの勢力圏にあるセバハを襲撃したと伝えられた。しかしロクレアー司令官は国連決議1973を遵守しないで砲撃しているのはカダフィ軍側だとしている。同司令官はカダフィ軍は西部のザウィア、東部のミスラッタやアジダビヤから撤退すべきだといっている。国連決議1973では攻撃の時空間や対象の限定が定められている。




【コラム】 リビアのカダフィ軍への「軍事介入の正当化」をサルコジ仏大統領が解説

フランスのニコラ・サルコジ大統領主導で開始されたリビア軍への空爆軍事介入だが、これを正当化して「数千の死が回避されたのだ」と発言した。「カダフィ軍が戦いを止め次第、攻撃は止める」としたが、戦争終結の日取りは発言されなかった。この背景には連合国側による市民攻撃の事実がネットなどで暴露されていて、サルコジによってリビア戦争の目的が曖昧なままに始められたことへの批判を心配するサルコジの危機感がある。

サルコジの提唱で始まり、欧州議会(EU)やアラブ諸国や国連安保理を政治的に巻き込んで展開されたリビアのカダフィ軍への空爆が市民の安全を擁護できずさらなる戦争拡大に拍車をかける危険があるとしてドイツやロシアから以前として批判されていたことが現実となってきているからだ。

3月25日のロマンディ・ニュースなどが伝えているところでは、サルコジ大統領はりビア戦争の責任を回避するが如く次のような発言もしている。1998年7月のスロベニアの例をあげながら「セルビアによるイスラム教徒8000人の殺害を止めることができなかったのは、国際社会の介入がなされなかったからだ」とサルコジは解説し結論している。

サルコジ主導のカダフィ軍への空爆の発案者として紹介されたベルナール・アンリ・レヴィは、24日夜のフランス国営放送・テレビA2のニュースに出演しサルコジ同様にリビアのカダフィ軍への介入を正当化する主張を展開した。