2011年10月3日月曜日

オルセー美術館、三階が修復工事、ゴッホやナビ派の絵画に日本画の「引き目カギ鼻」を発見


パリ・オルセー美術館

オルセー美術館の三階が修復工事で2011年末ごろまで予定されていて、展示場が変更されている。三階にあった印象派の絵とナビ派や後期印象派の絵が二階と一階に移されている。オルセー美術館には何度も来ているが今回の工事のおかげで思わぬ発見があった。ポール・セリュジエ(1864-1927)の作品「ブルターニュの健闘」もヴァンサン・ヴァン・ゴッホ(1853-1890)の作品「アルルのダンス・ホール」の絵も、そこに描かれた女性たちの目は西洋画の女性の目の描き方ではないことを見つけたのである。その絵に描かれた彼女たちをじっと見ていたら、目と鼻が例の日本の浮世絵の「引き目カギ鼻」で描かれている。これを見て私は、まるで新発見の心地で一人唸ってしまった。この二つの絵をよく見ると、さらに3つ4つの驚くべき発見があった。


たとえば、印象派が拒絶した息苦しい窒息させられるような遠近法の否定とその解決策をこの絵に見ることができるのだ。これは息を呑むような開放の感動なのである。


モネ、ルノワールやシスレー、セザンヌ、ロートレックなどの絵画は大分数がすくないようだ。オルセー美術館の監視員の話しでは修復は今年いっぱいかかるかもしれないといっている。今回はあわただしい中、日本趣味の時代と重なるポール・ゴーギャン、ヴァンサン・ヴァン・ゴッホ、ナビ派の画家や、スーラ、シニアックなどをいくつか見た。ナビはヘブライ語で預言者を意味する。




オルセー美術館正面の案内で大きなポスターの絵になっているが、本物は27X21センチで非常に小さいポール・セリュジエの作品で「タリスマン」(護符)といわれるものだ。ゴーギャンがブルターニュのポンタヴァンで若い青年たちに色彩の面分割法を伝持したといわれるその時の記念的な作品だ。これは前回に来たときは一階に置かれていたが誰もきずかないのか、この絵の前に立ち止まる人はほとんど皆無であった。絵の大きさやその抽象性からか目に付きにくかったのであろう。





今回の訪問では私の驚いたのはポール・セリュジエ(1864-1927)の作品「ブルターニュの健闘」という作品である。二人の男が闘っていて、それを判定しているらしき警察が1人わきにいる。観客は婦人だけでしかも大勢いる。男たちが漁に出かけた後の漁村の風景なのだろう。





同じようにヴァンサン・ヴァン・ゴッホ(1853-1890)の作品がいくつかあった。その中のアルル滞在時代の絵で「アルルのダンス・ホール」という作品があった。が、これには長い時間、足を止められた。この絵にも「ブルターニュの健闘」と同じように、多くの女性が描かれている。

「アルルのダンス・ホール」で踊っている夜の光が淡い黄色の支配する官能的な色彩にもよるが画面を構成する道具が日本の歌舞伎の舞台空間の模倣でできているようにも感じられる。前景の女性が全員後ろを向いていて、しかもその日本髪には全部かんざしが刺されているのだ。これも今回初めて気がついた。この絵は室内なのだがゴッホの「夜のカフェ」の異様な祭りのネオンの色のようにも似て見えた。



ピエール・ボナールの作品の一部