27日、国連の人種差別廃止委員会(Cerd)は、サルコジ大統領の安全政策はロマ人を排斥して人権侵害の人種差別になっていると厳しく批判し集団的な排斥を止めるようフランス政府に勧告した。ロマ人を誰れ彼なく一丸に見なして集団的に国外排斥をしないようにフランス政府に要求している。一人一人の個別的状況を考慮する人権の尊厳を欠いているとしている。排除され送り出される行き先は確かに強制収容所とは異なるが一箇所に集められ、、集団で乗り物に詰め込まれ送られて行くのはどこか第2次世界大戦中のユダヤ人の運命を髣髴させている。そこには民主主義における個人の扱いがみあたらないからだ。サルコジ大統領による彼らを社会の犯罪の原因とするグルノーブル宣言が打ち出され排斥が始まった。(本文の初出 / 2010年8月29 日 )
サルコジ大統領のロマ人集団排斥の政治に関しては、ヨーロッパ委員会、ヨーロッパ審議会が既に警告の批判をだしている。ドミニク・ド・ビルパン前首相からは「フランス国旗に恥のシミをつけた」との厳しい批判があった。
26日はマルチン・オブリ社会党書記長(前雇用相・リール市長)は「フランスは汚された。フランスの恥である」、「フランスは多様性な人々を受け入れる国だ」とサルコジ大統領の政策を厳しく批判した。27日にはセゴレーヌ・ロワイヤル前大統領候補がフランス西南部ラロシェルで開催中の社会党夏期講習会で「サルコジ大統領は何でも公私混同して行うサルコジシステムだ。もう止めにしてほしい」と厳しくその政治姿勢を糾した。(本文の初出 / 2010年8月29 日 )
ローマ法王ベネディクト16世も特にフランス人へ宛てたメッセージの中で「差別のない博愛の教育をあなた方の子供たちにするように」と説いている。フランス西南部のキリスト教徒の有名な巡礼地ルルドでは27日トールーズ教区の信徒や他の巡礼者を前にロベール・ル・ガル司教は「いまのロマ人や「旅の人々」の置かれている立場は第2次世界大戦中のユダヤ人の排斥の境遇と類似している」と数千人を前に発言した。ロマ人も他の人々と同じく兄弟なのだと説教して、フランス政府のロマ人排斥を人権に反するとして批判した。
27日、人権団体のデュボワ委員長がラジオFrance Infoのインタビューで答えた発言によると、「我々は心配しているだけでなくスキャンダルであると捉えている。というのは、サルコジ大統領の政治政策の内容というものが第2次世界大戦以後にはかって前例のないものであるからだ」として、「非難される理由の無いロマの人々を意識的に選んで、国の最高責任者であるサルコジ大統領が彼等をスケープゴートの犠牲者にしているからだ」と話した。そして重ねて「そういうことをする正当な理由は何一つ無いはずだ」と抗議している。同委員長は人種差別に値するサルコジ大統領の言葉を改めることをフランス政府に要求した。
同氏はさらに続けて「これが野放しの人種差別なのだ」ともいう。「それで国連の人種差別廃止委員会(Cerd)からこの度は正式に警告を受けることになったのである」と解説した。「今後もサルコジ大統領の挑発行為が終わるとは思えない。多くの団体が注意の勧告をしているがニコラ・サルコジの人種差別の圧力は収まりそうもない。その理由はサルコジ政権の失敗と関係していて、その回復のために人種差別が意識的に利用されているからだ」と説得力のある説明をしている。
Cerdの批判に対しては、エリック・ベッソン移民大臣は「フランスのイメージを落とさせた」と憤慨した。ベルナール・クシュネル仏外務大臣はサルコジ大統領はロマ人を苛(いじ)め排除するために特別な人種の烙印(スティグマ)化する政策はとってないと擁護し、そんな風刺やレッテル付けは受け入れられないと強く突き放した。それはフランスに対する攻撃だとやり返した。
しかしフランスはロマ人といわれるルーマニアやブルガリア人を、ダンボールや切れ端の板で作った彼等のバラック小屋の棲家を不法占拠だとしてブルトーザーと機動隊で壊して人々を路上に投げ出してきた。28機の飛行機で8313人を今年になってから現在までに集団的に帰国させている。
7月末のグルノーブルでのサルコジ大統領宣言は、移民の二世三世にたいしフランスのそれとは異なる明らかに人種差別した法律を準備しようとするものであった。この発言によって直接にロマ人やマイノリティの「旅の人々」に烙印(スティグマ)のレッテルが貼らた。「旅の人々」はその殆どがフランス国籍を持つといわれるが、社会の周辺部で生活するジタンだとして誤った同一視がなされてきている。
サルコジ仏大統領がグルノーブル発言ではフランスに於ける犯罪が「ロム」人や「旅の人々」などの移民によるとしたことは、移民を烙印し差別したことになる。移民だけに適応させる国籍剥奪の法律を作るというのはまさしく法の前に性や民族や言語・宗教によっていかなる人も差別を受けないという近代の平等思想に背くものであって、世界の人権宣言の思想にも違反している。この人種差別の問題が国際世論を騒がせている。(本文の初出 / 2010年8月29 日 )