2013年11月9日土曜日

仏国旗に「恥のシミ」 ロマ人排斥でド・ビルパン元首相やブタン議長がサルコジ大統領批判

22日ドミニック・ドゥ・ビルパン元首相は、サルコジ大統領が陣頭指揮しているロマ人排除政策を厳しく非難して「人道的誤り」だ、「今や、我々のフランスの国旗には恥のしみができた」とルモンド紙で発表した。キリスト教民主党(PCD)のクリスティーヌ・ブタン議長は22日、フランス政府によるロマ人排斥事件とそれを警告コメントしたローマ法王ベネディクト16世のフランス人へのメッセージを受けたかたちで、法王への感謝を語りながら、場合によってはPCDを与党国民運動連合(UMP)から分離させる考えがあると牽制する発言をした。そして、2012年の大統領選挙では独自の候補を立てることもありえるとしている。8月のサルコジ大統領の人気は依然として低迷(34%~36%)している、移民排除で得点した世論調査の支持率ポイントはたったの2点だ。しかもその内訳はロマ人排除を喜ぶ極右フロンナショナルのル・ペン支持者からの7ポイントが流れ込んでいる状態で驚くべき恐怖の政治である。(本文の初出 / 2011年10月15日 4:05 PM )

サルコジ大統領の7月30日のグルノーブル発言に対し、国連や欧州議会、各種人権団体やフランスの与野党の議員、さらにはローマ法王ベネディクト16世やフランス国内の司教からも人種差別の主張だとして厳しい批判の声が上がっている。フランス社会にもともと潜在化している人種差別の怨念を警察の取り締まりを強化させることで移民の暴力を顕在化させて視覚にうったえるという危険な政策だと批判されている。これが政府の移民をアマルガム化したりスケープゴートする差別化の仕組みであるとよく言われものだ。

7月30日になされたサルコジ大統領のフランス東部グルノーブル市での宣言は移民をフランス市民とは別の特別な法律で縛ろうとした人種差別である。これは「出生、人種または宗教の差別なく、すべての市民に対し法律の前の平等を保障する。」(「世界憲法集」岩波書店)という1958年制定のフランス共和国憲法に違反する発言であった。同様に1948年の「世界人権宣言」の第二条第1項にも反している。「何人も、人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的その他の意見、国民的もしくは社会的出身、財産、出生もしくはその他の地位のような、いかなる種類の差別もうけることなく、この宣言にかかげられているすべての権利と自由とを享有することができる」(「人権宣言集」岩波書店)とあり、これらに違反しているわけだ。

サルコジ大統領による移民を対象にした国籍剥奪宣言とは、フランス移民の二世三世の子弟が警察や国権の代行者へ暴力をふるった場合に、フランス国籍が剥奪されるというもの。また、犯罪をおかした移民の子弟の場合には、これまでのように成人すると移民の子供であっても自動的にフランス国籍が取得されたが、これを廃止すると宣言している。フランス人の子弟と移民の二世三世とを法的に差別しようという宣言となっていたことが大統領による人種差別問題の端緒となった。

グルノーブルでは大統領はフランス社会の犯罪の元凶が移民にあるとの発言もしていて、 その大統領の発言を実行に移したブリス・オルトフゥ法務大臣(前移民大臣)が指揮して大都市郊外の移民地区やロマ人のバラックや「旅の人々」のキャラバン・キャンプといったフランス国籍所有者も含めた社会の周縁部に生活する人々への排斥行為を推進するものとなっている。

ブタン議長はサルコジ大統領政権下の前住宅・都市相で早くからサルコジ大統領の行き過ぎを諌めていた。14日の「パリジィアン」紙でサルコジ大統領陣営を厳しく批判して、「恐怖を培養している」 「潜在的な暴力を人々を対立させてそれを顕在化させるのは良くないことである」と、大統領による移民排斥行為が国内の市民に人種差別の怨念の対立を掻き立てるのだと批判していた。ブタン議長はサルコジ大統領の親がハンガリー人であり「どうしてそれを大統領は忘れたのだろうか?」と疑問を提出している。(本文の初出 / 2011年10月15日 4:05 PM )